石川氏
経団連は11月5日、東京・大手町の経団連会館でダイバーシティ推進委員会企画部会(工藤禎子部会長)を開催した。
昨今、企業活動や組織運営においてウェルビーイングの重要性が高まっている。
そこで、Well-being for Planet Earth代表理事で予防医学研究者の石川善樹氏から「ウェルビーイングの高い組織づくりとDEI~チーム作りの視点」について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ 主観的ウェルビーイングと企業の責任
健康寿命では世界トップクラスの日本が、日々の生活に対する満足度(現在の主観的ウェルビーイング)や将来への希望(5年後の主観的ウェルビーイング)に関する国際ランキングでは極めて低い位置にある。
これを改善するには、生活で多くの時間を占める「はたらく」について、企業が従業員の主観的ウェルビーイングに真摯に向き合うことが、企業の持続的な成長と社会的責任の両立に不可欠である。
その背景には、(1)企業が従業員の主観を大事にするようになった(2)ウェルビーイングが企業価値を予測することが分かった(3)会社のESG(環境・社会・ガバナンス)格付けにウェルビーイングが加わった――などが挙げられる。
とりわけ、ESGのS(社会)において人的資本の情報開示が進むなか、従業員のウェルビーイングだけでなく、企業活動に関わるさまざまなステークホルダーのウェルビーイングについても、これから説明責任が求められるようになる。
国内外の実証データによると、ウェルビーイングが企業価値向上に寄与する非財務情報として注目されており、特に従業員の主観的ウェルビーイングが高い企業ほど、財務業績や採用力に好影響を与える傾向がある。
■ ストレス特性に基づくDEIの新たな視点
「ストレス特性のダイバーシティ」という新たな視点がある。人は「拡散」「保全」「発信」「受容」「弁別」といった異なるストレス特性を持ち、それぞれが異なる環境や役割に適性を持つ。これらの特性を理解し、自己理解の促進や採用、チーム編成、サクセッションに生かすことで、組織の機能性と成果を高めることができる。
従来のDEI(Diversity, Equity, Inclusion)は、ジェンダー、年齢、国籍などの表層的な属性に焦点を当ててきた。
一方でストレス特性は「人が何に対してストレスを感じるか」という内面的な傾向に着目するものであり、より本質的な多様性の理解につながる。
これは徹底した現場主義と創造性の発揮を特徴とする米国海兵隊が、より良いチーム作りのため、各人が適度なストレス状態にあるようにする一方で「何が適度なストレスになるかは人によってかなり特性が異なる」ということを踏まえたチーム編成を開発した(図表参照)。
例えば、日本人に多い「保全×受容」タイプは安定的な業務に、「拡散×発信」タイプは変革期のリーダーに適している。企業がこれらの特性を把握し、適切に活用することで、チームのウェルビーイングを高め、離職率の低下や生産性向上にもつながる。
ストレス特性を可視化することで、コミュニケーションの質や人材の定着率にも好影響がある。経営陣の特性を可視化することで、誰がどのような場面で力を発揮するか、どのような組み合わせが摩擦を生みやすいかが分かり、より円滑な組織運営につながる。
こうした特性の違いを理解して生かすことが、DEIの実践の次なるステージとなる。
■ 情報開示とウェルビーイング経営の展望
IR(投資家向け広報)の観点からは、例えば、味の素のように「人・社会・地球」の3層構造でウェルビーイングを捉え、統合報告書で積極的に開示している企業事例もある。
ウェルビーイングとは「緊張と緩和のバランス」であり、企業はその両方を支える環境づくりが求められる。従業員が安心して挑戦できる「居場所」と「舞台」の両面を整えることが、組織の活力と持続性を高めるカギである。
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説明の後、ストレス特性を活用した人材配置や情報開示のあり方、リーダーシップに求められる資質、DEIの次なる展開に関する方向性などについて活発な意見交換が行われた。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】
