経団連は日欧経済関係の重要性に鑑み、毎年欧州にミッションを派遣している。2025年は11月26日から12月2日にかけて、髙島誠副会長・ヨーロッパ地域委員長、東原敏昭審議員会副議長・同委員長を団長とする一行(注)が、英国・ロンドンおよびベルギー・ブリュッセル(EU)を訪問した。各国での懇談の概要は次のとおり。
■ 英国
左から髙島副会長、クーパー大臣、ミリバンド大臣、東原副議長
訪問先=イヴェット・クーパー外務・英連邦・開発大臣、ピーター・カイル ビジネス・貿易大臣、ハイディ・アレクサンダー運輸大臣、エド・ミリバンド エネルギー安全保障・ネットゼロ大臣、シーマ・マルホトラ外務・開発省/教育省閣外担当大臣、ジェイソン・ストックウッド ビジネス貿易省・財務省閣外大臣(投資担当)、ヴァルン・チャンドラ首相顧問、英国産業連盟(CBI)ほか
英国は24年に環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)に参加するとともに、インドやメルコスール(南米南部共同市場)との自由貿易協定(FTA)交渉等を進めている。
25年6月に公表した新産業戦略で先端製造業やAI等の重要8分野を選定して産業競争力強化に取り組むとともに、投資環境の整備を進めている。
日本については、信頼できるパートナーとして重視しているとの意見が相次いだ。
CPTPPを通じた自由貿易とハイレベルな基準の普及や世界貿易機関(WTO)改革に関して協力したいとの意向や、産業戦略パートナーシップのもとで量子、AI、ライフサイエンス等での協力を進めたいとの期待も表明された。
■ EU
ドムブロウスキス欧州委員(左から2人目)
相川EU日本政府代表部大使(同3人目)
訪問先=ヘンナ・ヴィルックネン上級副委員長、ヴァルディス・ドムブロウスキス欧州委員、ドラコス・トゥドラケ セジュルネ上級副委員長補佐官、ペドロ・ローティ コスタ欧州理事会議長官房長、マリア・マーティン・プラット貿易総局次長ほか
EUは、国際情勢が変化するなかで、自立に向けてパートナーシップの多様化と強化に注力している。メキシコ、メルコスールとFTA協定を締結したほか、CPTPPとの構造協議を開始した。
第2次フォン・デア・ライエン体制のもと、競争力を強化するため、規制の簡素化を進めている。デジタル化推進のためのスーパーコンピューターへの投資、データの整備、人材育成等も進めている。
他方で公共調達では域内製品を優先させる姿勢も見られる。
日本に対しては、価値観を共有し、法の支配や自由貿易を掲げる同志国だとして、CPTPPでの協力やWTO改革、経済安全保障の確保、デジタル分野等で協力に期待が示された。
域内製品優先の方針に対する経団連の懸念を考慮する意向も示された。
(注)英国は18社35人、EUは16社32人が参加
【国際経済本部】
