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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2026年1月1日 No.3711 コーポレートガバナンス改革の課題と提言 -金融・資本市場委員会

太田氏

経団連は11月20日、都内で金融・資本市場委員会(髙島誠委員長、中田誠司委員長、佐藤雅之委員長)を開催した。西村あさひ法律事務所・外国法共同事業の太田洋弁護士から、わが国のコーポレートガバナンス改革の課題と対応策等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ わが国資本市場の現状

ブルームバーグの調査によると、アクティビストによる活動件数で、2019年以降、日本は米国に次ぐ世界第2位である。アクティビストは日本市場で極めて活発に活動しており、25年はさらなる拡大が見込まれている。

M&A公表後にアクティビストが介入し、株式買付価格の引き上げ等を要求する「バンピトラージ」と呼ばれる事例も増加している。

アクティビストの行動も、市場での株式売却を目指す米国と異なり、日本では市場内で20~40%まで買い上げ、自社株TOB(公開買い付け)やMBO(経営陣による買収)を誘発してエグジットする事例が多い。

25年6月に開催された株主総会では、計111社に対する389件の株主提案のうち定款変更議案が62%を占めた。英米と異なり、日本では定款変更形式の株主提案であれば、業務執行事項に属する事項に関する提案も制度上認められているため、政策保有株式の売却や資本コスト開示の義務付け等を要求する事例が目立っている。

中小型株では複数の投資家が連携し、臨時株主総会招集請求を通じて支配権取得を図る動きも増えている。

■ アクティビストの動向と手法

アクティビストの手法は多様化している。伝統的な株主提案・委任状争奪戦に加え、臨時株主総会招集請求と組み合わせた活動が19年以降目立っている。会計帳簿だけでなく取締役会議事録の閲覧・謄写を請求するケースも増加しており、議事録の記載内容がリスクとなり得る。

近年は、株主代表訴訟の活用も広がっており、不祥事に対する経営責任を問う形で訴訟が提起されるケースが増えている。

この他にも、市場内での大量買い上げを起点に、企業に対して自社株TOBや大規模還元策の実施を迫り、株価上昇局面で短期的に売り抜ける事例や取締役会へ外部メンバーを送り込み、株式の非公開化や資産売却を強く促す例もある。

東京証券取引所の流通株式比率規制を利用して支配権獲得を画策する動きは、24年度に同制度の運用が見直されたことにより一定の抑制が図られたが、MBO提案を通じてプレミアム付きの売却機会をつくり、短期で利益確定を図る手法など、短期志向型の手法は依然増加している。

■ あるべき会社・資本市場法制の方向性

課題は3点に整理される。

第一に、ガバナンス改革により監督機能が強化されたにもかかわらず、株主が業務執行事項に直接介入できる構造が残存している。

第二に、「事後監視・救済型」を志向しながらもエンフォースメントが弱く、大量保有報告違反や相場操縦的取引が十分に抑制されていない。

第三に、一部のアクティビストによる短期的利益追求の姿勢が、中長期の成長投資や人的投資の余地をそいでいる。

これらの課題への対応としては、株主提案権・臨時株主総会招集請求権の要件厳格化、長期保有株主を優遇する複数議決権制度の導入、TOB・大量保有報告規制違反株主への議決権制限、UBO(実質的支配者)開示の導入、報告期限の短縮、短期売買差益規制への共同保有者概念の導入、M&A公表後取得株式の買い取り価格の制限等が必要である。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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