安倍氏
経団連は12月15日、重要労働判例説明会をオンラインで開催した。森・濱田松本法律事務所の安倍嘉一弁護士が「解説!同一労働同一賃金に関する二つの重要判例」をテーマに各判例のポイントを解説した。概要は次のとおり。
■ AGCグリーンテック事件
1.事案の概要
一般職の女性社員(原告)が、会社が総合職にだけ借上社宅制度を認めていることが実質的な性差別であるとして、男女雇用機会均等法(均等法)違反に基づく損害賠償等を求めた事案。
2.判決のポイント
同判決の特徴は、間接差別(男女比率等に鑑み、実質的に一方の性を優遇する措置)として均等法に列挙されていない措置について、民法等の一般法理に照らし違法と認めた点だ。
具体的には、総合職の大部分を男性(34人中33人)、一般職の大部分を女性(7人中6人)が占め、両者の実質的な家賃負担額の差が大きかったことを指摘。
通勤圏内に自宅を所有していない総合職は、転勤の現実的可能性の大小等の事情を問わず一律に制度対象とし、労働者の能力育成や組織運営上の必要性等からの転勤が定期的に行われていたとも認められないとした。
会社側の「総合職の労働の対価」「採用競争において重要」という主張についても、求人票に社宅制度の実態は明示されておらず、労働の対価とうかがわせる文言も見当たらず、総合職にのみ対価を追加する合理性はないとして、間接差別に基づく損害賠償を認定した。
■ 明徳学園事件
1.事案の概要
高校に勤める常勤講師が、専任教員との賃金差は差別であるとして、不法行為に基づく損害賠償等を求めた事案。
2.判決のポイント
同判決の特徴は、異なる職種の基本給に関する均衡待遇(不合理な待遇差の禁止)に言及し、かつ原審と控訴審で判断が分かれた点だ。
具体的な違いとして、原審は、昇給が止まる勤続5年超の常勤講師には、専任教員と同様に、年齢給、職能給、功労報酬等を支給する目的が妥当することを指摘。現在の業務内容と責任の程度、配置の変更の範囲と将来の職務内容について、これほどの賃金差を設けるまでの違いは認められないとして、不法行為に基づく損害賠償を認定した。
控訴審は、中核的業務としての授業を教えることについては求められる能力や責任は同じとしたうえで、専任教員はいずれ管理職や役職者、入試問題の作問担当者となる現実的可能性があり、賃金差が30%に収まっているとして、損害賠償請求を棄却した。
■ 実務上の留意点
裁判例は事案に即して理解することが重要だ。
二つの判決について、例えば、総合職に占める女性が1人ではなく複数人でも間接差別が認められたのか、均等法が定めていない措置に関する間接差別や、パート有期法の射程外である無期転換後の賃金差についても、各法律と変わらない枠組みで判断してよいのか、賃金差が30%に収まっていれば不合理といえないのか――など、判決の評価は定まっていない部分がある。
同一労働同一賃金の考え方に基づき、職種間で賃金や昇進要件等に差を設ける場合は、合理的な理由が求められる。
【労働法制本部】
