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月刊 経団連  巻頭言 「金メダル」の気概をいまこそ

加藤 進 (かとう すすむ) 経団連審議員会副議長/住友商事会長

今月末よりロンドンで、夏季オリンピックが開催される(7月27日~8月12日)。世界のトップ・アスリートが一堂に会し、互いの技量を競い合う世界最大のスポーツの祭典である。

オリンピックは、1896年の第1回大会から今回で30回目となるが、当初わずか14カ国であった参加国は、前回の北京大会では204カ国と史上最多を記録し、まさにグローバルな祭典と呼ぶにふさわしい大会となった。スポーツを通じ、平和で、より良い世界に貢献することがオリンピック本来の目的であるが、同時に競技参加者にとっては自らの実力を試す貴重な機会でもある。

日本が初めて参加したのは、ちょうど100年前の1912年ストックホルム大会のこと。日本代表選手はわずか2名で、参加した短距離とマラソンでは世界の競技レベルの高さを痛感させられたと伝えられている。しかし、「スパイク」や「クラウチングスタート」などを持ち帰り、陸上競技の技術向上に貢献した。その初参加から100年。日本人選手は、通算で123の金メダルを獲得している。オリンピックという舞台で、競技者一人ひとりが世界レベルの実力を肌で知り、そのうえで己の弱みを克服して、強みはさらに磨きをかけ、世界で戦える技量を身に付ける努力を続けてきたからに違いない。

参加すること自体に意義があるオリンピックと同列に議論するわけにはいかないが、TPP(環太平洋経済連携協定)にいまさら参加しないという選択肢はないと確信する。先般、経団連の一員として訪問したベトナムでも、政府要人から日本の交渉参加を歓迎するとの声が相次いだ。ベトナムでも、日越共同イニシアティブという枠組みのもとでビジネス・投資環境の改善に取り組んでいる。そうすることが長期的にはベトナムの競争力を高め、国家発展につながるという高い目線で、各省庁の協力を引き出している点は見逃せない。

経済成長の源泉はイノベーションである。TPPを通じて世界とつながり、競争を通じて新しい知識や知恵を取り込むことが、潜在力の開花につながるという前向きな発想が大切である。さらにいえば、日本には農産物をはじめ、潜在的な輸出ポテンシャルを持つ高い質のものが数多くある。これらが輸出しやすくなるというメリットはとても大きい。

TPPについては、目先の損得にとらわれることなく、「弱みを克服して、強みはさらに磨きをかける」ことにより、各分野で金メダル獲得を目指すという気概をいまこそ持ちたい。

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