働き方改革のススメ
世の中、空前の人手不足だ。経営資源の三大要素であるヒト、モノ、カネのうち、モノは先進国や中国でのデフレ懸念が示すとおり過剰気味であり、カネについてもいまだ日欧で続く量的金融緩和のため金利が付かないほど余っている。その一方で、今の日本ではヒト不足が経営上の深刻な問題となっている。
世の中、空前の人手不足だ。経営資源の三大要素であるヒト、モノ、カネのうち、モノは先進国や中国でのデフレ懸念が示すとおり過剰気味であり、カネについてもいまだ日欧で続く量的金融緩和のため金利が付かないほど余っている。その一方で、今の日本ではヒト不足が経営上の深刻な問題となっている。
日本経済の発展にとってベンチャー企業の創出と育成は欠かせないものとなっている。政府の「日本再興戦略」においても、ベンチャー企業に関する政策の抜本的強化を図る方針が示されている。しかし、日本では、大企業・大学・VC(ベンチャーキャピタル)とベンチャー企業の間での資金・知や技術・人材の循環が著しく少ないというシステム面の課題が存在している。日本において持続的にベンチャー企業を創出・育成していくためには何が求められているのか、大企業、大学、VC、ベンチャー企業のそれぞれの立場から、また地方創生の観点も踏まえつつ議論する。
根岸修史 (経団連起業・中堅企業活性化委員長/積水化学工業会長)
経団連は、「『新たな基幹産業の育成』に資するベンチャー企業の創出・育成に向けて」を取りまとめた。このなかでは、(1)大企業・大学・VC・ベンチャー企業の連携促進、(2)科学技術イノベーション政策との連動、(3)大学をハブとしたベンチャー創出・育成、(4)産学官一体となった地方における「起業」拠点の確立の推進、を提言している。「ベンチャー・エコシステム」の構築が日本再興の鍵となる。それに向けた人材の好循環を進めるために、大企業の社員こそ、一定期間ベンチャー企業と人材交流することが重要だろう。
各務茂夫 (東京大学教授・産学協創推進本部イノベーション推進部長)
特許権などの知的財産が大学のアセットとして注目されるなか、東京大学では、2004年に産学連携本部(現・産学協創推進本部)を発足させ、大学専属のVC等も創設し、以来大学発ベンチャーの創出を強力に推進してきた。一方、既存の主として大企業との連携については現在、年間約1600件の産学共同研究が行われており、大学と企業との共同発明は300件を超える。しかし、残念ながらその多くは企業内で事業化されず埋没したままである。こうした技術をカーブアウトして事業化を検討することができるのではないか。大学としても、研究成果が学術論文にとどまるのではなく、イノベーションを創出するためにはビジネスへののりしろが出た「ショーケース化」を図っていきたい。
秋池玲子 (ボストンコンサルティンググループ シニア・パートナー)
地方創生の議論が進むなか、どの地方自治体もベンチャー企業に関する取り組みを積極的に行っている。しかし、これまでの工場誘致のような「雇用ありき」でとらえると、芽が出るのに時間がかかるベンチャー企業に失望する地方自治体も少なくない。地方が本気でベンチャー企業育成に取り組むのであれば、根気強く見守る覚悟が必要だ。日本のベンチャー企業の課題として、エグジットの問題がある。IPOを目指すだけでなく、大企業に売却して事業を成長させるという選択肢にも光を当てるべきだ。
出雲 充 (ユーグレナ社長)
ベンチャー企業の使命には、大企業が取り組みにくい、成果が出るまで数十年かかる研究開発を忍耐強く進めることや、一定の規模感が出るまで時間のかかる事業に取り組むことも含まれている。大企業とともにベンチャー企業がオープンイノベーションを推進していくためには、ベンチャー企業の顕彰・評価を行っていくこと、ベンチャー企業が求める人材を大企業が貸し出すような制度をつくることが必要である。そうしたなかで、日本社会にベンチャーを応援する風土がさらに醸成されていくだろう。
高橋 誠 (司会:経団連起業・中堅企業活性化委員会企画部会長/KDDI代表取締役執行役員専務)
KDDIは、企業によるスタートアップ支援として、(1)アーリー/ミドルステージのベンチャーへの出資を基本としたファンド(KDDI Open Innovation Fund)と、(2)シード/アーリーベンチャーのアクセラレーションプログラム(KDDI ∞ Labo)を、2011年に発足させた。後者においては、これまでのコーポレートVCの失敗を踏まえ、「Give First」の精神で、31社のパートナー企業が自社のアセットをベンチャー企業に提供している。昨年からは地方自治体とも連携し、地方の起業家への支援も展開している。
第五期科学技術基本計画とベンチャー企業に対する期待
原山優子 (総合科学技術・イノベーション会議常勤議員)
次世代の国富を担う産業の創出に向けて
―ベンチャー・エコシステムの活性化を目指して
勝又幹英 (産業革新機構社長)
今求められる人材とその育成手法とは
―MBAとテクノロジーを融合させたテクノベート教育の可能性
堀 義人 (グロービス経営大学院学長/グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナー)
【提言】
公的統計の改善に向けて
http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/027.html
石原邦夫 (経団連副会長、経済財政委員長/東京海上日動火災保険相談役)
上釜健宏 (経団連経済財政委員長/TDK社長)
【提言】
新たな経済社会の実現に向けて
―「Society 5.0」の深化による経済社会の革新
http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/029.html
内山田竹志 (経団連副会長、未来産業・技術委員長、情報通信委員長/トヨタ自動車会長)
中西宏明 (経団連副会長、情報通信委員長/日立製作所会長)
下村節宏 (経団連審議員会副議長、産業競争力強化委員長/三菱電機相談役)
岡藤正広 (経団連審議員会副議長、産業競争力強化委員長/伊藤忠商事社長)
小野寺 正 (経団連未来産業・技術委員長/KDDI会長)
近藤史朗 (経団連情報通信委員長/リコー会長)
【提言】
今後の教育改革に関する基本的考え方
―第三期教育振興基本計画の策定に向けて
http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/030.html
中西宏明 (経団連副会長、教育問題委員長/日立製作所会長)
渡邉光一郎 (経団連審議員会副議長、教育問題委員長/第一生命保険社長)
【提言】
大規模災害への対応における官民連携の強化に向けて
―わが国全体の強靭化、防災力向上に向けた戦略
http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/028.html
山内隆司 (経団連審議員会副議長、社会基盤強化委員長/大成建設会長)
川合正矩 (経団連社会基盤強化委員長/日本通運会長)
橋本孝之 (経団連社会基盤強化委員長/日本アイ・ビー・エム副会長)
経営者のひととき
休息のすすめ
岩崎清悟(静岡ガス会長)
Essay「時の調べ」
有田焼創業400年その歴史と魅力
鈴田由紀夫(佐賀県立九州陶磁文化館館長)
産業革命発祥の地
新明由美(在英国日本国大使館一等書記官)