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月刊 経団連 座談会・対談 日露経済関係の新たな展望を切り拓く

橋本 剛
司会:経団連日本ロシア経済委員会輸送部会長
商船三井取締役専務執行役員

下斗米伸夫
法政大学法学部教授

野路國夫
経団連審議員会副議長
コマツ会長

原田親仁
日露関係担当政府代表兼特命全権大使

朝田照男
経団連日本ロシア経済委員長
丸紅会長

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朝田照男 (経団連日本ロシア経済委員長/丸紅会長)
2015年の日露貿易額は減少する一方で、対露直接投資は増加した。これは、ロシアのポテンシャルに対する日本企業の期待を表している。ビジネス環境上の課題は多いが、世界銀行による「ビジネス環境ランキング」でロシアの順位は上昇しており、プーチン大統領の号令のもと、環境改善が着実に進んでいることがうかがえる。経団連の訪モスクワミッションでは、昨年公表した「日ロ経済関係の基本的な考え方」に基づき、さらなる改善を要望するとともに、5月の日露首脳会談で示された「8項目からなる協力プラン」の具体化に向けて、関係構築を図ってまいりたい。

原田親仁 (日露関係担当政府代表兼特命全権大使)
昨年9月の岸田外務大臣の訪露以降、日露関係は政治対話が活発化し、肯定的な基調にある。今年5月のソチの日露首脳会談では、幅広い分野での関係進展につき意見交換が行われた。そのなかで、平和条約交渉については今までの発想にとらわれない「新しいアプローチ」で交渉を進めていくことで一致し、経済分野では、安倍総理より8項目からなる「協力プラン」が示され、プーチン大統領はこれを高く評価した。今後は、官民連携で協力プランを具体化していきたい。また、ロシア政府に対してビジネス環境改善のため積極的に働きかけていく。

野路國夫 (経団連審議員会副議長/コマツ会長)
当社は、旧ソ連時代の50年前から継続して事業を展開している。近年は工場や人材育成センターを開設した。その経験から、ロシアに進出する日本企業は、厳しい気候条件、行政手続きの煩雑さ、物流コストの高さ、コンプライアンス等のリスクを十分把握する一方、勤勉な国民性、高い科学技術等の長所を活かす戦略を持つべきである。現在、ロシアの景気は低迷しているが、当社では、今こそブランドを根付かせるチャンスと考え、人材育成に力を注いでいる。

下斗米伸夫 (法政大学法学部教授)
2006年12月、プーチン大統領は、国家安全保障の観点から極東地域の開発を重視する「東方シフト」の大号令を発した。昨今のロシアと欧米の関係を考えると、東方シフト、アジアシフトこそ、ロシアの生きる道である。そうしたなか、昨年来、日露間でハイレベルな政治対話が実現していることは、日露関係の将来に明るい見通しを抱かせる。ソ連時代からのつながりを持つ世代は、この20年間活躍するチャンスがなかった。その分、過去のしがらみのない若い世代が、今、新しいアプローチで関係をつくろうとしている。

橋本 剛 (司会:経団連日本ロシア経済委員会輸送部会長/商船三井取締役専務執行役員)
北極海、ベーリング海、オホーツク海等、気象条件の厳しい海域における海上輸送を継続して確保していきたいと考えている。そのためには、日露双方の緊密な経済的・技術的・人的協力関係が不可欠である。両国の政治リーダーの強力なイニシアティブにより、日露関係史上かつてないモメンタムが醸成されるなか、経済界としては、日露相互の強みを活かしながら未開拓のポテンシャルを追求し、ロシアとのビジネス対話を一層緊密化していきたい。

  • ●日露関係に関する現状認識
  • ハイレベルの政治対話が次々と実現
  • 「東方シフト」の大号令から10年を経て
  • ロシアのポテンシャルに期待する日本企業
  • 景気低迷の今こそブランドを根付かせるチャンス
  • アジア向けの資源輸出が伸びていくのは明らか
  • ●ロシアビジネスの推進に向けた課題
  • 訪モスクワミッションでビジネス環境改善を要望する
  • ロシアについてよく勉強することが一番のリスクヘッジ
  • 官民が連携して取り組むことが重要
  • 日露間で新しい世代のマッチングが始まっている
  • メンタリティーの違いを乗り越え、プロジェクトをやり遂げたい
  • ●日露経済関係の拡大と深化に向けた展望
  • 極東で日露合作の新しい産業を生み出す
  • さまざまなレベルでの人的交流を推進すべき
  • 官民連携で8項目の協力プランの具体化へ
  • 新たな分野に拡大するロシアビジネス
  • 北極海航路の開拓を通じた二国間・多国間協力の展望

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