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月刊 経団連

月刊 経団連2018年4月号

特集 サイバーセキュリティ ―新たな時代の安心・安全

巻頭言

サイバーセキュリティ強化のための協調体制の構築

佐藤康博 (経団連審議員会副議長/みずほフィナンシャルグループ会長)

第4次産業革命技術の社会実装およびSociety 5.0の実現に向け、データ利活用促進が求められている。IoT(Internet of Things)時代のキーは、あらゆるモノがインターネットにつながることによって収集した「データ」をいかに活用するかである。

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特集

サイバーセキュリティ ―新たな時代の安心・安全

サイバー空間とフィジカル空間の融合による新たな社会「Society 5.0」。あらゆるモノ・コト・サービスがネットワークでつながり、データの活用が飛躍的に進むことにより、さまざまな社会的課題が解決される。そんな輝かしい未来が到来する。一方で、サイバー攻撃の対象が増加し、対策を急がなければあらゆる情報が窃取され、事業の停止や物理的障害までもが引き起こされてしまう。安心・安全なSociety 5.0を実現するためには、サイバーセキュリティに万全を期さなければならない。2年後の2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控えた今、関係者の連携のもと対策強化に国を挙げて取り組むことが喫緊の課題となっている。
そこで本座談会では、野田聖子総務大臣を迎え、Society 5.0時代におけるサイバーセキュリティのあり方、対策強化に向けた産学官それぞれの役割と連携について議論する。

座談会:サイバーセキュリティ ―新たな時代の安心・安全

  • 野田聖子 (総務大臣/衆議院議員)
  • 中西宏明 (経団連副会長、情報通信委員長/日立製作所会長)
  • 土屋大洋 (應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
  • 遠藤信博 (経団連審議員会副議長、情報通信委員長/日本電気会長)

PDF形式にて全文公開中

野田聖子(総務大臣/衆議院議員)
2020年の東京パラリンピック成功に向けた取り組みを進めるなかで、サイバーセキュリティの重要性を認識し、自民党「サイバーセキュリティ対策推進議員連盟」を立ち上げた。現在は、総務大臣として「IoTセキュリティ総合対策」を推進している。サイバーセキュリティは安全保障の問題であり、国家として国民を守らなければならないという思いで取り組んできた。これからも国会議員の課題認識を高めつつリテラシー向上に努めていくが、経済界からの応援を期待している。

中西宏明(経団連副会長、情報通信委員長/日立製作所会長)
変革によって新たな世界が誕生するとき、ポジティブな側面とネガティブな側面が必ず生まれる。前者がSociety 5.0実現による社会的課題の解決であるとすれば、後者の典型例はサイバーセキュリティ問題である。東京オリンピック・パラリンピックでは、交通機関をはじめとする社会インフラへの攻撃が想定される。ITのみならずOTのスキルをも備えた人材育成が急務である。ここ3年の間に、経営者の認識も大きく変わってきた。官民連携のもとサイバーセキュリティ対策を推進していきたい。

土屋大洋(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
意図的なサイバー攻撃は、必ず地政学上のリスクと結び付いている。近隣諸国との緊張関係を抱える日本は、東京オリンピック・パラリンピックが狙われることを想定し、対策を講じる必要がある。ハッカーたちの「晴れ舞台」にしてはならない。初等中等教育など早期に人材を育成する取り組みが必要だ。政府の過剰な関与を望まない日米英等のグループと、国際条約などによる規制強化を主張する中露・中東諸国等のグループとの間で国際協議が二極化することを懸念している。日本は、ASEANとの協議など、各国・各地域との関係構築を急がなければならない。

遠藤信博(経団連審議員会副議長、情報通信委員長/日本電気会長)
IoTの世界では、サイバー空間と個々のネットワークの双方がセキュアな状態であることが求められる。現在、セキュリティ人材は圧倒的に不足している。明確な対処方針のもと、人材の育成・確保を図っていく必要がある。同時に、国民のリテラシーを高める取り組みやSociety 5.0を担う若い世代を育てるための教育システムの構築も必須である。当社では、総務省による事業の一環として、ASEAN諸国での人材育成も行っている。引き続き産学官の連携、国際的な協調・協働を進めたい。

根本勝則(司会:経団連常務理事)

  • ■ Society 5.0時代におけるサイバーセキュリティ
  • Society 5.0の「ネガティブ面」が、サイバーセキュリティ問題
  • サイバー空間、個々のネットワークの双方がセキュアであるために
  • パラリンピックの成功とサイバーセキュリティ
  • 東京オリンピック・パラリンピックをハッカーたちの「晴れ舞台」にしない
  • ■ サイバーセキュリティ人材の育成
  • 才能ある子どもたちが活躍できる環境づくりを
  • 社会インフラを守る「OT人材」が不可欠
  • サイバー空間をめぐる2つのグループの対立
  • 従来の能力観にとらわれない人材育成を
  • ■ 経営者の意識を変えていくために
  • 情報のフラットな共有が不可欠
  • 企業におけるセキュリティに対する認識
  • 日本で「トップガン」を育成できるか
  • ■ 対策強化に向けた各主体の役割と連携
  • 「サイバーセキュリティ統括官」を新設
  • 標準化に向けた合意形成の努力が必要
  • 情報共有における言語問題を日本の技術力で解決せよ
  • オープンかつ柔軟な姿勢で諸外国との関係構築に努めたい
  • サイバーセキュリティは安全保障の問題である

「経団連サイバーセキュリティ経営宣言」にあたって
http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/018.html
 金子眞吾(経団連情報通信委員長/凸版印刷社長)

  • サイバーセキュリティ強化を求める提言
  • サイバーセキュリティ経営宣言の策定
  • 基本方針の周知と「態勢」の整備
  • 対策はグローバルレベルで

サイバーセキュリティ最前線
 西本逸郎(ラック社長)

  • ITの喪失は事業継続に直結する危機
  • 経営者が腹落ちするセキュリティ対策とは

真の安全・安心を目指して
―サイバー攻撃被害から学んだ堅ろう化の取り組み
 中島 透(日立製作所情報セキュリティリスク統括本部長)

  • WannaCry感染における初動対応
  • 事案を通して学んだこと
  • 日立における堅ろう化施策の取り組み
  • 真の安全・安心を目指して

東京オリンピック・パラリンピックそしてSociety 5.0の実現を見据えた本検討会の活動概要
―サイバー攻撃は社会的リスクとみなして官民が緊密に連携した「オールジャパン」の視点で推進すべき
 上野耕司(産業横断サイバーセキュリティ人材育成検討会会長/JXアイティソリューション統括部長)

  • 産業横断サイバーセキュリティ人材育成検討会発足の経緯と概要
  • サイバーセキュリティを取り巻く喫緊の課題
  • 本検討会の活動概要
  • 今後の展望

Society 5.0実現へ向けた産業サイバーセキュリティの強化
 寺澤達也(経済産業省商務情報政策局長)

  • Society 5.0型サプライチェーンのセキュリティを確保し、競争力の強化へつなげる
  • 産業サイバーセキュリティ強化へ向けて、経営戦略としての取り組みと人材育成が重要

【鼎談】
サイバーセキュリティ 最後の砦

―セキュリティ専門家が語るわが国の目指すべき方向性
PDF形式にて全文公開中
 名和利男(サイバーディフェンス研究所専務理事)
 西尾素己(デロイト エクスポネンシャル マネジャー)
 中島明日香(日本電信電話)
 小川尚子(司会:経団連産業技術本部上席主幹)

  • サイバーセキュリティとの出会い
  • セキュリティ人材育成に向けての課題
  • Society 5.0、未来社会に向けて

「サイバーセキュリティ? なにそれ、おいしいの?」からの脱却
 文月 涼(内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)上席サイバーセキュリティ分析官)

サイバー犯罪の国際的な傾向と官民連携による対策
 中谷 昇(インターポールグローバルコンプレックス・フォー・イノベーション(IGCI)総局長)

  • 最近の傾向
  • 官民連携の重要性

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けたサイバーセキュリティ対策
 坂 明(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会チーフ・インフォメーション・セキュリティ・オフィサー(CISO))

  • 東京2020大会をめぐるサイバー環境
  • 東京2020大会に向けた取り組み

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一般記事

【提言】
Society 5.0の実現に向けたイノベーション・エコシステムの構築

http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/010.html
 山西健一郎(経団連副会長、未来産業・技術委員長/三菱電機取締役相談役)
 小野寺 正(経団連未来産業・技術委員長/KDDI取締役相談役)

  • 「周回遅れ」挽回の切り札「Society 5.0」
  • イノベーション・エコシステムの構築
  • 企業の新たな挑戦
  • 大学・国立研究開発法人と企業の連携の強化
  • 政府の司令塔の確立

連載

  • 住友化学 × Society 5.0 → SDGs
    -SDGsに貢献する製品・技術を社内認定、その開発・普及を促進
     住友化学

    • 経営方針の明確化:
      新たな中期経営計画で「社員と家族の健康維持」を明記
    • 組織体制の強化:
      施策立案から効果検証までを全社的な連携で取り組む
    • 施策の工夫:
      仕組みや方法の見直しによってさらなる課題解決に挑戦
    • 改善効果:
      長年の取り組みが成果を発揮。地域コミュニティーからの評価も顕在化
  • 日本のエネルギー情勢の現状と課題 (7)
    今後の電気事業について
    ―エネルギー政策を考えるうえでの視点

    (電気事業連合会)

    PDF形式にて全文公開中

    • 国際的なエネルギー情勢とわが国のエネルギー供給構造
    • 電力コストの上昇
    • 温室効果ガスの排出削減
    • 安全確保を大前提とした原子力発電の活用
    • まとめ
      ~「S+3E」の実現に向けて
  • これからのヘルスケア (6)
    社会に貢献できる健康経営
    (花王)

  • 経営者のひととき
    組織を再建するリーダーはどうあるべきか
    ―『難題が飛び込む男 土光敏夫』

    武藤光一(商船三井会長)

  • Essay「時の調べ」
    水着で温泉へ
    ―ハンガリーと日本の文化的な差異

    コバーチ・エメシェ(ハンガリー・カーロリ・ガシュパール大学講師)

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