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月刊 経団連 座談会・対談 医療・ヘルスケアの未来

宮田裕章
慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授/東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座特任教授

岡野原大輔
Preferred Networks副社長

高橋祥子
ジーンクエスト代表取締役/ユーグレナ執行役員

畑中好彦
経団連審議員会副議長、未来産業・技術委員長
アステラス製薬会長

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畑中好彦(経団連審議員会副議長、未来産業・技術委員長/アステラス製薬会長)
経団連の提言「Society 5.0時代のヘルスケア」では、AIやIoT、バイオテクノロジーなどの新しい技術を活用することで、健康寿命の延伸、医療費の適正化など、新しい価値を生み出すことができるとしている。これは、日本が自国の課題を解決することにとどまらず、国際社会が直面する社会的課題を解決し、国連のSDGs達成に貢献するものである。治癒から未病ケア・予防へとシフトするなか、製薬産業においても、従来にない視点でものごとをとらえ、新しい技術を活用して価値を生み出すべく、最近では、企業や業界の垣根を越えた協働を進めている。

高橋祥子(ジーンクエスト代表取締役/ユーグレナ執行役員)
当社は、個人向けに遺伝子情報を解析し、将来の遺伝的な疾患の発症リスクに関する情報を提供している。ユーザーは、この情報を基によりしっかりと予防を行うことができる一方、匿名化したデータを活用して、研究を加速することができる。ゲノムデータ解析のコストは、今後、無料に近いレベルにまで下がるだろう。それを前提とした議論を始めなければならない。課題山積といわれるが、私は未来への好奇心の方が強く、現状をポジティブにとらえている。ビジネスと研究のシナジーを生み出しながら、日本のヘルスケアのアップデートに貢献していきたい。

岡野原大輔(Preferred Networks副社長)
当社は、ヘルスケア、ライフサイエンス分野を1つの柱とし、AIとIoTの技術を活用して新しい価値を創出することを目指している。AIは技術的に未熟な部分があり、医師を代替することは考えられないが、強みと弱みを理解したうえで活用していけば大きな武器になる。他国と比較して、製品やサービス、医療行為が認可されるまで時間とコストがかかりすぎることが弱みとなっている。医療特区でAIを使った医療行為などが認められれば、データやノウハウの蓄積は加速する。日本ほどAIの受容にポジティブな国はなく、大きなチャンスと認識している。

宮田裕章(慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授/東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座特任教授)
人口減少、高齢化、少子化、低成長と、日本が直面している課題は他の国が直面したことのないものであり、現状の延長のみで未来を見いだすことは困難である。課題の克服に向けては、新技術の活用を行うだけでなく、システムや社会そのものを変革する必要があり、そのビジョンを政府は「Society 5.0」として掲げている。医療・ヘルスケア分野においても、データポータビリティ、アクセス権など、グローバルスタンダードとなっている概念を取り込みながら、日本ならではのデータ活用とvalue sharingの基盤を整備していくことが重要だ。ピンチはチャンスである。Society 5.0へと社会が再構築されるなかで、新時代における社会保障やヘルスケアのあり方を提示し、世界をリードする可能性がある。それは日本の価値を高め、世界の安定と繁栄に貢献することにつながる。

根本勝則(司会:経団連専務理事)

  • ■ 医療・ヘルスケアを取り巻く環境変化と技術の進歩
  • Quality of Life, Quality of Societyの向上を目指す
  • ゲノム解析分野でビジネスと研究のシナジーを生み出す
  • AIのディープラーニング技術をヘルスケア分野で活用
  • 日本ならではのデータ活用基盤整備が必要
  • AIとビッグデータの活用が進む製薬産業
  • ■ 医療・ヘルスケアの未来と課題
  • AIで医療の現場はどのように変わるか?
  • ゲノム情報の活用に向けた倫理基盤づくりの議論を
  • 個人情報はオプトイン/オプトアウトができるかたちで
  • 企業、業種の垣根を越えた「協働」が進んでいる
  • ■ 将来に向けて
  • 日本だけでなく世界を支えるヘルスケアシステム
  • AIによる医療が当たり前の世界になる
  • 日本のヘルスケアのアップデートに貢献したい
  • 国民の納得性を高めることが大切

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