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月刊 経団連 巻頭言 「明るい未来のある日本」に向けた働き方改革

根岸修史 (ねぎし なおふみ) 経団連審議員会副議長/積水化学工業相談役

日本で少子高齢化問題が顕在化してから久しい。このまま対策を打たなければ、2050年には総人口が1億人を割り込むとも推計されており、足元での人手不足は深刻だ。他方、ITやAI、ロボティクスなどの革新技術により仕事を取り巻く環境は激変しており、企業が持続的に成長するためには、働き方改革の推進が待ったなしだ。

働き方改革には2つの軸があると考えている。1つは「労働生産性の向上」である。現在多くの企業が取り組んでいると思うが、当社も2018年を「働き方改革元年」として積極的に投資を行っているところである。限られた時間のなかで社員が成果を最大化するため、電子タグを活用した工場生産ライン改善等の「業務改革」や、現場レベルでのTV会議拡充等の「就業環境改革」を推進している。

2つ目は「社員の働きがいを育む」ことだ。働きがいは人それぞれであろうが、指示待ちや歯車ではなく、自らの頭で考えて、当事者意識を持って業務に取り組むこと、いわゆるオーナーシップを発揮することが1つの重要な要素だと考えている。そしてこのオーナーシップこそが、AIが加速度的に発達するなかでも人間にしか持ち得ない最も大切な能力ではないか。これまでの日本企業に見られた「横並び」や「出る杭は打たれる」といった風土を一新し、社員が自らのオーナーシップを活き活きと発揮できる体制づくりが重要で、当社もそうした人材を支援できる人事制度改革を行う決意である。

今後迎えるSociety 5.0時代では、新たな革新技術が次々と生まれるであろう。単純労働やいわゆる3K職場はますます人の手から離れる一方、これまでは存在しなかったより付加価値の高い仕事が人には求められる。企業は時代の変化に応じた働き方改革を推進し続けるべきであり、それはすなわち働く人の環境が持続的に向上していくことになる。将来の世代のために、企業はなすべきことをきちんと認識して、明るい未来のある日本をつくる一翼を担う責任があると考えている。

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