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月刊 経団連  巻頭言 人々の交流を促進しイノベーションを創出する街づくり

菰田正信 (こもだ まさのぶ) 経団連審議員会副議長/三井不動産社長

街づくりの主役は、建物ではなく、「人」である。

街は「訪れる人」「住む人」「働く人」に新しい価値を提供するものでなくてはならない。そして、その価値を生み出す中心となるのも、「人」である。人々が交流することで、新しいアイデアやビジネスが創出される。また、地域でコミュニティーが形成され、さまざまな活動が起こることでその街の魅力が高まる。

少子高齢化やグローバル化、人々のライフスタイルの多様化等により、世の中にはさまざまな価値観が溢れている。そうした多様な価値観を体現する人々の交流を促すためには、街づくりにおいて、オフィス、商業施設、住宅、ホテル、エンターテインメント施設等の多彩な都市機能を集結させ複合させるミクストユースのコンセプトが重要である。街で多彩な価値観が出会い、掛け合わされることで、これまでにない価値創造が期待される。

とりわけ、Society 5.0時代においては、オープンイノベーションの促進が不可欠である。産学官の連携研究拠点や、スタートアップ企業を支援する拠点、大企業とスタートアップ企業の交流拠点といった要素を街に取り込み、さまざまな専門分野を持つ人々の交流・連携を促すことで、オープンイノベーションを加速させなければならない。より多くの優秀な外国人材を呼び込む必要もある。そのためには国際的な対応が可能な教育施設・医療機関や行政サービス等を充実させ、生活環境を整えることが必須である。また、魅力的な文化芸術施設の拡充や、国際交流拠点としてのMICE(Meeting、Incentive、Convention、Exhibition)の整備等も重要である。

さらに、人と人とのリアルな交流に加えて、デジタルテクノロジーの活用も欠かせない。世界各地とのネットワークを利用し、AI・IoT等の最新技術を用いて街に集まるデータの解析を進めることで、さまざまな社会課題の解決を実現することが可能となるだろう。これからの街づくりは、主役である「人」の「くらし」を豊かにするものでなければならない。

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