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月刊 経団連 座談会・対談 都市のデジタルトランスフォーメーション ~スマートシティの現状と展望

出口 敦
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授

栗田卓也
国土交通審議官

本間 洋
NTTデータ社長

菰田正信
経団連審議員会副議長、都市・住宅政策委員長
三井不動産社長

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菰田正信(経団連審議員会副議長、都市・住宅政策委員長/三井不動産社長)
先進国が直面している課題を、まちづくりのなかで解決していくことがスマートシティのあり方であり、日本のスマートシティが先行事例にならなければならない。これは都市の国際競争力強化の観点からも重要である。スマートシティ実現への課題は3つ。「ビジョンの策定」「マネジメント組織を通じた多様なステークホルダーの参画」「データ活用やイノベーション創出に向けた環境整備」。本当に街がスマートシティになるためには、現在各地で行われている実証実験で成功したものを実装していくことだが、もうその段階に入っている。今の成果を着実に社会実装に結び付けていかなければならない。

本間 洋(NTTデータ社長)
当社ではさまざまなスマートシティの実証実験に取り組んでいる。例えば、電力データなど生活インフラデータの活用によるQOLの向上、官民のデータを利活用した大都市での災害対策、自動運転プロジェクトなど。さらに最新技術として、人の思考や感情を含めたシミュレーションができるようになり、生活者でないと気が付きにくい課題を発見し、全体最適化した解決策を見いだすことができる「デジタルツインコンピューティング」の実現に取り組んでいる。一方、スマートシティの実現にあたっては、デジタル人材不足が喫緊の課題でもあり、IT企業とユーザーの両面でデジタル人材育成が必要である。

栗田卓也(国土交通審議官)
スマートシティ構想を通じたSociety 5.0の実現を目指すという、政府の高次レベルの意思決定をした。私どもは、社会に実装していくためのドライビングフォースとして役に立ちたいと考えている。「スマートシティモデル事業」では15の先行モデルプロジェクト、23の重点事業化促進プロジェクトを選定し、支援している。また、現在「国土交通データプラットフォーム」にも取り組んでいる。国土、交通、物流、経済活動、自然現象に関するデータのプラットフォームをつくることで、スマートシティ施策の高度化、産学官連携によるイノベーションの創出を目指している。

出口 敦(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)
エネルギーマネジメントを中心とした第1世代のスマートシティから、課題解決型の第2世代スマートシティが日本のモデルとして社会実装されつつある。しかし、地域の課題を発掘する仕組み、人材育成、地域データ銀行の構築など課題もある。また、Society 5.0はデータ駆動型社会を意味するともいえるが、それが社会にどのように許容されていくか、新しい社会の方向性、ビジョンを示していくことが必要。居住からの変革「ハビタット・イノベーション」のアプローチもSociety 5.0の実現には欠かせない。今後は、課題解決型のスマートシティ、さらにその先の価値創造型のスマートシティ実現を目指したい。

根本勝則(司会:経団連専務理事)

  • ■ Society 5.0時代の都市の姿
  • 第2世代スマートシティの潮流
    ~スマートグリッドから社会課題解決型へ
  • デジタル革新とデータ活用で社会課題を解決し価値創造を実現する
  • スマートシティ構想を通じたSociety 5.0の実現を目指す
  • デジタルツインコンピューティングで潜在的課題を抽出し解決
  • ■ スマートシティ推進に向けた取り組み
  • その都市特有の課題をさまざまなデータ連携で解決
  • 環境共生、健康長寿、新産業創造をテーマとした柏の葉スマートシティのまちづくり
  • 居住からの変革
    「ハビタット・イノベーション」によるSociety 5.0
  • 「国土交通データプラットフォーム」の構築
  • ■ スマートシティの推進に向けた課題と今後の展望
  • スマートシティのビジョンを描くこと
  • 2030年にはデジタル人材が55万人不足する
  • スマートシティは手段でその先に社会的目的がある
  • 今の成果を着実に社会実装に結び付けていかなければならない

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