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月刊 経団連 巻頭言 3Rは未来世代との誓約

市川 秀夫 (いちかわ ひでお) 経団連審議員会副議長/昭和電工取締役会議長

経済規模拡大と生活レベル向上に伴って、地球温暖化、プラスチック廃棄物による海洋汚染などの地球環境問題がクローズアップされ、それらの課題解決に対する、より積極的な取り組みが求められている。

菅総理は「2050年までのカーボンニュートラル実現」という意欲的な目標を世界に向けて宣言した。我が国で発生している温室効果ガスは年間12.4億トン(2018年実績、二酸化炭素換算)にも達する。森林資源などによる温室効果ガス吸収能力の増大には限界があり、発生量を削減するしかない。

多くの企業においてSDGs、ESG投資はいずれも優先度の高い経営目標として掲げられ実行に移されている。一方で、電力、生産、移動、運搬などに必要なエネルギーとしては、化石燃料の使用が経済性、安定供給性、利便性の面において圧倒的な優位性を持っているというのが現実だ。化石燃料を代替する再生可能エネルギー使用拡大のためには、現状を打破する飛躍的なイノベーションが不可欠である。競争力あるクリーンエネルギーシステムの開発によって持続可能な成長を目指すべきである。

翻って一生活者として、私達はどう行動すべきかを考えてみたい。我が国の電力需要は、産業用途が37%、民生用途が61%である。部門別に見たCO2排出量も民生用が32%を占めている。企業の削減努力に加えて、一般市民の省資源、省エネルギー、環境に配慮した生活や行動による貢献が不可欠だ。私達がすぐにでも実行可能な活動は3R(Reduce=削減、Re-use=再使用、Recycle=循環)の取り組みだ。過剰包装の省略、再生品の活用、分別収集の徹底に加えて、クリーンエネルギー利用の拡大、電力消費の節減、食べ残し食品の削減・有効利用など、一人ひとりの小さな取り組みの集積が大きな効果を生み出すはずだ。

利便性や快適な生活を否定するわけではないが、空調の行き届いた住環境、外出時の車使用、24時間営業の商店やレストラン、翌日・即日配達のネット販売、星どころかお月様さえ霞むほど明るい繁華街の照明などは、本当に必要なのだろうか。行き過ぎた快適さを見直し、「少し不足」「少し不便」「少し手間」を当たり前と受け入れる生活者の意識改革が求められている。それこそが未来世代に引き継ぐべき生活文明であり、まずは3Rの実行が彼ら彼女らとの見えない誓約ではないだろうか。

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