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月刊 経団連 座談会・対談 ポストコロナに向けて、労使協働で持続的成長に結びつくSociety 5.0の実現

松浦 民恵
法政大学キャリアデザイン学部教授

篠原 弘道
経団連副会長
日本電信電話会長

渡邉 光一郎
経団連副会長
第一生命ホールディングス会長

大橋 徹二
経団連副会長、経営労働政策特別委員長
コマツ会長

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今年1月に公表した経営労働政策特別委員会(以下、経労委)報告では、SDGsの達成など社会課題の解決に労使が共に取り組むことの重要性を強調している。
また、人口減少下で迎えるポストコロナ社会に向けて、我が国の成長力を高めるには、「労働生産性の向上」「労働参加率の上昇」、成長分野等への「円滑な労働移動」を同時に進める必要がある。この実現のため、企業には、働き方改革の深化や、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、日本型雇用システムの見直し、主体的な学び直しの支援などが求められる。
本座談会では、2022年版経労委報告を踏まえ、今次春季労使交渉・協議における対応、今後の労使関係等について議論していく。

大橋 徹二(経団連副会長、経営労働政策特別委員長/コマツ会長)
工場や営業などの現業では、テレワークは容易にはできない。現業特有の課題に対応した、働き方改革や人事制度を構築する必要がある。ジョブ型雇用の検討に際しては、各企業が培ってきた労使の信頼関係や企業風土に合った制度を作り出すことが重要である。事業の方向性の変化に合わせた教育も必要。当社でエンゲージメントサーベイを行った結果、一般的な傾向通り世界の中で日本の社員は最下位だった。エンゲージメントの向上なくして、Society 5.0の実現はない。働き方改革をさらに進展させるためにも、労使で年間を通じて議論しながら、次の方向に向かっていかなければならない。春季労使交渉は、賃金の議論だけで終わるべきではない。

渡邉 光一郎(経団連副会長/第一生命ホールディングス会長)
春季労使交渉は、未来志向での議論であるべきだ。Society 5.0の実現に向け、労使がどのように協調してベクトルを合わせるのかを議論する必要がある。働き方改革では、「well-being」をゴールとし、“人”の視点を忘れてはならない。鍵となるのは社員のエンゲージメント、D&Iの推進だ。“Respecting each other, Learning from each other”、そして“Growing together”、この視点が重要である。労働移動には、「仕事と学びの好循環」のサイクルを回すことが必要である。雇用システムは、外部環境の変化やグローバル化の進展と合わせ、各企業が最適な自社型雇用システムを確立することが求められる。

篠原 弘道(経団連副会長/日本電信電話会長)
多くの働き手がコロナ禍で多様な働き方を経験した。今後は、人生の中で仕事をこなす「ワークインライフ」を推進し、社員のエンゲージメントを高めていくことが重要である。その中で、専門職を含めた多様な職種の社員をどのように評価するかは、経営サイドに突き付けられた課題である。労働時間から成果を尺度にした働き方にシフトし、本人が目指す目標をどの程度達成したかを評価する絶対評価の仕組みに変えていく視点も必要である。労働移動については、人の採用だけではなく、他社とのコラボレーションもメニューとして考えるのも一案。大きな変革点にいる自覚を持てば、議論のあり方は総合的な処遇改善にシフトしていくと思う。

松浦 民恵(法政大学キャリアデザイン学部教授)
在宅勤務では仕事と生活の境界が曖昧になりやすいことから、今後は仕事と生活を適度に統合しながら、境界管理を意識的に行うことがより重要となる。日本型雇用システムについては「閉ざされている」ことが問題の本質であり、「閉ざされた長期雇用」から「開かれた長期協働」へと移行すべきだ。労使関係の重要性が高まっていると同時に、人材の多様化が進んでいる。ダイバーシティは集団として主張をまとめることを難しくする面があることから、「集団的」労使関係とは必ずしも相性が良くない。ダイバーシティのもとでの労使関係のあり方を、労使で模索し再構築していく必要がある。

椋田 哲史(司会:経団連専務理事)

  • ■ 課題認識、働き方改革およびD&Iの浸透への取り組み
  • 社員のエンゲージメントを向上させ、well-beingを目指す
  • 「ワークインライフ」で社員のエンゲージメントを向上させる
  • 現場特有の課題に対応する必要がある
  • テレワークでは、仕事と生活の境界管理が課題
  • ■ 日本型雇用システムの見直し、自社型雇用システムの検討
  • 労働時間から成果を尺度とした働き方にシフト
  • 自社の労使関係や企業風土に合ったジョブ型雇用を導入する
  • グローバル化の進展に合わせ最適な自社型雇用システムを確立する
  • 閉ざされた長期雇用から、開かれた長期協働へ
  • ■ 成長分野への円滑な労働移動の推進
  • 働き手の変化対応には「知的好奇心」「学習習慣」「チャレンジ力」が必要
  • 産業構造のシフトに合わせたリスキリングやリカレント教育が必要
  • 「仕事と学びの好循環」で労働移動を促進する
  • リカレント教育はメニューの拡大が不可欠
  • ■ 2022年春季労使交渉の対応方針と今後の労使関係
  • 労使交渉とは未来志向の労使関係についての議論である
  • 総合的な処遇改善に重点を置いて議論することが必要
  • 春季労使交渉は賃金の議論だけにとどまらない
  • ダイバーシティのもとでの労使関係の再構築

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