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月刊 経団連 巻頭言 リケジョを増やし、価値創造力を高める

篠原 弘道 (しのはら ひろみち) 経団連副会長/日本電信電話相談役

企業が持続的な成長を遂げるためには、新たな価値を創造し続けていくことが不可欠である。経団連では「価値協創型DX」を提唱し、企業、スタートアップ、アカデミアや政府・自治体といった多様な主体による連携の重要性を指摘している。価値創造のためには、外部との連携に加え、企業そのものの価値創造力を高める必要がある。価値創造力の源泉の1つは、多様な社員たちのイノベーション活動への参加であると思う。

現在の日本企業では、女性、特にリケジョ(理工系女子)のイノベーションへの参加が十分ではない。その原因の1つは、理工系に進学する女性の割合が20%前後と低位で推移していることにある。専門によっては、女性の割合はさらに低い。価値創造力強化のために、企業はリケジョの増加にもっと積極的に取り組むべきではないだろうか。

女性が理系へ進学するうえでの大きな阻害要因に、家庭、教育現場、社会におけるアンコンシャス・バイアスがある。「理工系の職場は男性向き」などのバイアスが女性の多様な進路選択を阻む壁になっている。このバイアスは、理工系の職場に関する理解不足や、単なるイメージや思い込みによるものである。

従って、経済界からアンコンシャス・バイアス解消に向けたメッセージを発信する必要がある。一番効果的なメッセージは、企業で活躍する女性像(ロールモデル)の提示である。家事も育児も仕事も完璧にこなす「スーパーウーマン」というより、身近で自分を投影できるようなロールモデルの提示が効果的である。多様な活躍場所があることを提示するためにも、個社で取り組むのではなく、企業が連携して取り組んではどうだろうか。もちろん、社内におけるアンコンシャス・バイアスの解消、ライフイベントを考慮した制度の策定、働きやすい環境作りも喫緊の課題である。

「リケジョ」という呼称でジェンダーを意識する必要なく、多様な人材が活躍できる環境を早期に整備すべきである。

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