1955年、糸川英夫博士が手掛けた長さ23センチの「ペンシルロケット」から始まり、わが国は長年にわたり世界に伍する宇宙システム技術を培ってきた。これら技術は、安全保障、宇宙空間での新たなインフラ構築や資源開発等の新ビジネスに加え、地球環境保全といった分野でも応用が可能である。地球規模の気候変動や資源枯渇等の課題に対し、宇宙から地球を見つめる視点を入れることで、より効果的な解決策を見いだせる。宇宙は社会課題の解決と新たな価値創造の源泉と捉えることができよう。
近年、世界各国では、宇宙ビジネスが成長産業として再定義され、従来の国家主導から民間主体への転換が加速し、民間能力を活用するための各種施策が打ち出されている。例えば、米国スペースX社のように、政府やNASAの強い後押しを受け、独自技術と革新的発想による商業化が進展し、宇宙ビジネスは「21世紀のブルーオーシャン」と言われている。一方、わが国の宇宙基本計画においても、官民連携と民間支援強化を軸に、新たな宇宙産業の未来像が描かれている。それに向けた宇宙技術戦略策定と、具現化のための宇宙戦略基金が整備され、将来に向けた必要条件が整いつつある。
今後は、国内宇宙産業自立に向けて、新市場の創出が求められる。このためには、米国に倣った政府によるアンカーテナンシー、長期間の機器・サービス調達といった、基金活用等で得られた開発成果を産業化へとつなぐ、官民連携の仕組みの構築が不可欠である。産業化のめどが付くことで、初めて民間投資も加速する。加えて、ベンチャー企業育成支援、規制見直しやスピード感のある許認可体制整備等の包括的政策も必要だ。政府には、より力強い司令塔機能を発揮いただくことを期待したい。宇宙には、未知なる未来が開かれており、新産業創出の可能性を秘めている。科学・技術の追求、未来創造、ビジネス展開、この3本柱のもと、活力ある宇宙産業を築き上げたいと考える。