2024年、出生数が初めて70万人を割った。将来推計より14年も早い70万人割れだ。われわれの想像を超える速さで進行する「少子高齢化」という日本の構造的な問題は、様々なひずみを生んでいる。中でも、日本の財政は、世界で類を見ないほど深刻な状態で、財政の健全化は避けては通れない大きな課題と言えよう。
日本の財政状況を、短期間で劇的に改善させる魔法は存在しない。基礎的財政収支(プライマリーバランス)の早期黒字化を果たし、地道に債務比率の改善を進めていくしかない。社会保障関連費といった歳出の適正化に向けた議論はもちろんだが、縮小均衡に陥らないためにも、歳入を増大させる取り組みが重要だ。その王道は日本経済の持続的な成長だろう。
ここで金融・資本市場に目を転じると、大きなトレンドの変化が生まれ始めている。2024年2月、日経平均株価は実に34年にわたり続いてきた呪縛から抜け出し、バブル崩壊前の最高値を更新した。期を同じくして大きくリニューアルされたNISAは、いまや成人人口の4人に1人が口座を持つ時代となり、国民生活に根付き始めている。これまでなかなか進まなかった「貯蓄から投資へ」の流れは、大きな地殻変動を伴いながら、じわじわと、しかし確実に動き始めているということだ。
個人投資家の活性化は、経済成長にも寄与する。企業は、新たに投じられたリスクマネーを成長投資に振り向けることで企業価値を向上させ、その果実を配当や株価上昇という形で家計に還元する。この還元により、さらなる投資や消費が促進される。この循環こそが、日本経済の持続的成長の原動力となる。家計金融資産は過去最高を更新し続けており、まさに「成長と分配の好循環」を実現できる千載一遇の機会と言えよう。この好機を逃してはならない。
世界を見渡すと、分断・多極化が一層深刻化し、ますます混迷の度を深めている。いまこそ、日本が存在感を発揮し、豊かな未来を次世代につないでいくべく、官民一体となって果敢に挑まねばならない。