先日、「生産性向上」について議論した際、従業員のエンゲージメント指数が日本は7%と世界平均の21%に対して低い水準にあるという結果(ギャラップ社「State of the Global Workplace」調べ)を知って驚いた。日本的経営の名残である年功序列、終身雇用等が安心や企業への愛着を生んでいると思い込んでいたので、従業員をつなぎ留める要因とは何かを深く考えさせられた。
私自身は、創業期も、責任が大きくなった今も、仕事へのエネルギーが勢い余って周囲にたしなめられるのも相変わらずだが、働き方改革やハラスメント防止対策が進み、「長時間働いてこそ一人前」というゆがんだ常識が薄れてきたことは大きな進歩だと思う。働き過ぎが是正され、心と身体の健康が尊重されるようになった今の時代は、間違いなく良い方向へ進んでいる。
ただその一方で、「何も言わない方が安全」と指導や対話を避ける場面も増えた。「叱られないが、育っている実感もない」という若手の声に、私自身、少し戸惑う。「あの会社はブラックだから」と同じくらい「あの会社には学びがない」も立派な転職理由になる。
働く人の意欲は、安定よりも「意味」や「納得感」から育つのだと思う。可能性を秘めながら、仕事を通じ、これから何かを見つけようとする若手にとって、エンゲージメントとは、まずは「誰かの役に立てている」という実感と、「ここにいていいんだ」という納得感ではないか。
脱ハードワークの時代でも、自分で考え抜き、生じた疑問を議論できる環境があり、気付きのスイッチが入った瞬間を捉え、挑戦の機会を提供するサイクルで人は育つはずだ。
組織が個を信じ、支える構えを持てたとき、働くことはもっと自由で創造的な営みになり、人生と仕事とがいい意味でボーダレスになれば、この国はきっと新しいフェーズに入るだろう。