経団連は8日、東京・大手町の経団連会館で道州制推進委員会企画部会(田川博己部会長)を開催し、同志社大学大学院の新川達郎教授から、関西広域連合「道州制のあり方研究会」がまとめた最終報告について説明を聞き意見交換した。
説明の概要は次のとおり。
■ 国・地方の役割分担
同研究会では、地方分権を進める観点から具体的な事務に即して国・道州・市町村の役割分担と権限移譲を検討。その結果、「河川管理」「産業振興」「インフラ整備」「森林保全」「農業政策」「医療制度」等の分野では、国は総合的な基本方針や国家的成長戦略の策定、高度な基礎研究の推進等を示すこととし、広域自治体や基礎自治体は地域に則した計画立案と事業実施を行うのが望ましいとしている。「義務教育」「生活保護」の面では、現場に近い基礎自治体が責任と権限を持つ一方、国や広域自治体はナショナル・ミニマム制度とその基準設定の明確化、基礎自治体の主体的な取り組みを支える垂直補完といった役割を担うとした。
■ 税財政制度
税財政制度については、国がナショナル・ミニマムとして、ある程度の財源保障責任を引き続き担うこととし、その権限を基に地方が国にコントロールされないよう、国と地方が議論し利害を調整できる公の場を設けることが必要とした。課税自主権に関しては、道州ごとに制度が異なることで、納税者のコスト増や道州間の租税競争につながるおそれがあることから、法人課税や消費課税を国税に残し、地方税は個人課税を中心として、税の負担者と受益者を一致させるという方向を示した。
なお道州間の財政調整については、現状の地方交付税の対象を段階的に整理・縮小し、それぞれの道州の自主的な努力が財政に反映される仕組みづくりが必要と指摘している。
■ 道州と大都市の関係
道州と大都市の関係については、大都市を「都市州」として独立させるのではなく、むしろ道州内に残し、都市間連携や農山漁村との連携を図れるよう、都市間の水平連携をしながら、広域的な課題に対応することが重要としている。また、規模の小さな基礎自治体については、市町村間の水平連携と国・道州による垂直補完が必要であるとした。
■ 道州制推進基本法案
自民党内で議論されている道州制推進基本法案については、(1)地方分権推進の意図が曖昧(2)国・地方を通じた統治機構のあり方が不明(3)府県廃止の議論が先行して、小規模市町村の不安感だけが増している――等を指摘。大規模な統治機能改革をするのであれば、それぞれの地域が自主的・自発的に考え、地域の実情に応じた柔軟な選択ができる仕組みを目指すべきであり、道州制の中身の議論を今後もっときめ細やかにする必要があるとしている。
【産業政策本部】