経団連は12日、東京・大手町の経団連会館で「防衛装備移転三原則に関するセミナー」を開催した。同会合では、政府が4月1日に閣議決定した「防衛装備移転三原則」に対する理解を深めるため、経済産業省および防衛省から同原則の説明を聞くとともに、関係者によるパネルディスカッションが行われた。当日は、企業、関係省庁、各国大使館等から約240名が参加した。
冒頭、大宮英明・経団連副会長・防衛生産委員長が開会あいさつにおいて、産業界からみて、防衛装備移転三原則はこれまでの武器輸出の実質的な全面禁止に代わり、移転を禁止する場合を明確化するとともに、移転を認め得る場合を限定し明確化した大きな政策の転換であると指摘。新たな制度のもと、わが国による国際社会の平和と安定および繁栄への貢献は、政府の具体的な施策と官民の協力にかかっていると述べた。
説明およびパネルディスカッションの概要は次のとおり。
■ 経済産業省説明=中山亨・貿易経済協力局貿易管理部長
防衛装備移転三原則では、第1原則で防衛装備の移転を禁止する場合を明確化し、第2原則で移転を認め得る場合を限定し、第3原則で目的外使用や第三国移転に関する管理のあり方を規定した。
審査の基本的な方針としては、過去に個別例外化して認めたような案件については経済産業省のみで許可するが、重要な案件については、国家安全保障会議で審議する。
■ 防衛省説明=堀地徹・経理装備局装備政策課長
防衛省としては、新三原則に基づき、防衛装備の国際共同開発・生産について、米国との協力関係の深化や欧州主要国との協力関係の構築を図る。
装備・技術協力について、米国およびイギリスとは政府間の枠組み協定を締結した。オーストラリア、フランス、インド、ASEAN、イタリア、ドイツなどとは意見交換を実施している。このほか官民で国際装備展示会に参加することも重要である。
■ パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、モデレーターに森本敏前防衛大臣を迎え、上記2名のほか、経済界からは、水谷久和・経団連防衛生産委員会総合部会長、有識者として及川耕造・発明協会副会長(元防衛大臣補佐官)が参加した。
まず森本氏から、新原則が採用された理由、具体的にできるようになったこと、政府と産業界の関係などについて問題提起があった。
これに対し水谷氏が、戦闘機F-35などの国際共同開発・生産に対応するため、新三原則は大きな進展であると評価。政府には防衛装備協力の基本方針の策定、産業界には技術力を高める必要があると述べた。
及川氏は、政府が海外との秘密保持協定等の締結や官民リスク分担など環境を整備し、民間は国際共同開発・生産の調査や情報管理の体制を整備することが必要であるとの考えを示した。
中山氏は、個別の案件について、外務省や防衛省と密接に連携しながら判断する必要があると発言した。堀地氏は、防衛装備の供与について整備や人材育成まで含むパッケージを考えることになり、こうした役割を担う仕組みを検討したいと述べた。
【産業技術本部】