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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年3月1日 No.3352 21世紀政策研究所がセミナー「2018年の国際情勢を展望する(第2回 米国)」を開催 -変わらない米国、変わりつつある米国

21世紀政策研究所(三浦惺所長)は2月8日、シリーズセミナー「2018年の国際情勢を展望する」の第2回として、「変わらない米国、変わりつつある米国」を開催した。

同研究所米国プロジェクトの久保文明研究主幹(東京大学法学部教授)、前嶋和弘研究副主幹(上智大学総合グローバル学部教授)が、米国の外交・安全保障政策と国内政治に関して、この1年の動きと今後の展望について解説を行った。

■ 「米国の国内政治の現状と展望」

前嶋研究副主幹

最初に、前嶋研究副主幹は、トランプ政権1年目の国内政策を、大統領選挙で支持をしてくれた層へそれぞれ以下の「還元」をすることで一層の支持固めを図ったとの視点から解説した。すなわち、税制改革は「小さな政府」を支持する層への、保守派の判事任命は「宗教保守」への、TPP離脱、NAFTA再交渉、対中貿易赤字への圧力といった保護貿易主義的な動きは「怒れる白人(白人ブルーカラー層)」への還元と説明した。

また、今年の注目点として、最大の政策課題は10年間で1.5兆ドル規模となる「インフラ投資」であるが、上院の承認に必要な60人以上の賛成に対して、現在、上院共和党は51議席にとどまることから、民主党側からの賛成が必須であり、政権2年目は「融和」がポイントであると指摘した。

今年秋の中間選挙については、上院は、改選34議席のうち民主党現職が26議席であることから、攻める共和党が有利との見方を示した。一方、全議席が改選の下院については、現在、40議席強の差で共和党が多数であるが、昨年の秋以降、下院で引退する共和党議員が相次ぎすでに20人を超え、上院選や知事選への転出を加えると30人を超える現職議員が変わること、また、民主党側が「下院で過半数を得れば、ロシアゲートの訴追、弾劾裁判をスタートできる」とのわかりやすいメッセージで戦うので、必ずしも共和党が優位とはいえないとした。

■ 「米国の外交・安全保障政策の現状と展望」

久保研究主幹

次に、久保研究主幹は、昨年11月の日米首脳会談で、自由で開かれたインド太平洋戦略で一致した点について、トランプ大統領が価値と秩序(海洋秩序)にコミットしたのは大きな変化であるし、ティラーソン国務長官、マティス国防長官、マクマスター大統領補佐官ら側近の支持により、基本政策として固まりつつあるのは確かだとの見方を示した。

昨年末に公表された、トランプ政権としては初めての具体的な安全保障政策の基本となる「国家安全保障戦略」は、(1)米国民と国土の防衛 (2)米国の繁栄促進 (3)「力による平和」の堅持 (4)米国の影響力拡大――の4つの分野で構成されており、トランプ大統領の公約に配慮した(1)(2)と、共和党の伝統的な政策である(3)(4)がうまくブレンドされたものであると評価した。特に、共和党保守本流のタカ派的政策が示された(3)(4)がポイントであり、その後に公表された「国家防衛戦略」「核戦略見直し」のなかでも同様に示された中国とロシアに対する厳しい評価は、同盟国が安心できるメッセージとなったと解説した。

最後に、トランプ政権をどうみるかは、トランプ大統領だけに着目しても難しいが、側近レベルでは、世界で何が起きているか、米国にとって何が問題で、何をしないといけないのかということをしっかりと考えているのが、最近の動向からみて取れ、大統領と側近というこの2つのレベルでトランプ政権をみていく必要があるとの見解を述べた。

【21世紀政策研究所】

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