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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年3月21日 No.3401 今後の規制改革のあり方について聞く -行政改革推進委員会

経団連は2月28日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会(山本正已委員長、筒井義信委員長)を開催。大阪大学データビリティフロンティア機構の岸本充生教授から「わが国における今後の規制改革のあり方」をテーマに講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ 規制影響分析の重要性

わが国の規制改革の議論には、普遍的なプロセスを整備する観点が欠けている。個別事項の改革を図る従来の手法では、圧力を弱めると改革が後退するおそれや、選定テーマに疑義が生じる可能性がある。そこで、今後の手法として規制影響分析(Regulatory Impact Analysis、RIA)の整備を提案したい。

RIAは、規制の新設・改廃時に想定される複数の選択肢について、社会や経済に与える影響を可能な限り定量的に予測して比較を行い、最終的な規制案の費用対効果の高さを説得的に示す一連のプロセスで、(1)着想段階から利用して規制の策定を円滑に進める(2)規制の質を向上させる(3)規制の正当性を利害関係者とコミュニケートする――という効果が期待できる。

■ 諸外国の取り組みとわが国の現状

OECD加盟国は1970年代からRIAの制度化を開始し、規制の導入に伴う費用や便益の定量分析を進めてきた。RIAの活発化に伴い、最近では導入時に加えて、既存の規制も費用ベースで見直されている。例えば、英国では2015年からの5年間で規制遵守費用を100億ポンド削減する目標を定めたほか、米国のトランプ政権は、1つの規制の新設時に2つの既存規制を見直して社会全体の費用の増加を抑える「Two-for-One」ルールを導入した。

RIAの実施で重要な役割を果たすのが規制監視機関である。米国ではOIRA(Office of Information and Regulatory Affairs)、英国ではRPC(Regulatory Policy Committee)が第三者的な立場で規制官庁のRIAをチェックしている。

諸外国でRIAの制度化が進むなか、わが国も07年に「規制の事前評価制度」(規制影響分析)を導入したが、現状では主に3つの問題があり、効果的に機能しているとはいい難い。

1つ目の問題は、対象を法律と政令に限定したこと。省令や告示、議員立法に基づく規制は除外されるため、国民生活や企業活動に影響のある規制は必要性を十分に立証せず導入されている。

2つ目は、実施・公表の期限を閣議決定や意見公募手続までと設定したこと。規制案の導入が固まってからRIAを実施して評価書を作成すればよいため、規制官庁には精度の高いRIAを実施するインセンティブに乏しい。規制の策定プロセスで活用されず、追加的なペーパーワークと認識され、公表された評価書のなかには、費用や効果が定量化されていないものや代替案の検討が不十分な事例が少なくない。

3つ目は、実施段階で第三者に意見を述べる余地がないこと。政策評価の理念は「自己評価」のため、各省庁に対してRIAの再検討を求めることはできない。

■ 今後の課題

OECDは12年の「規制政策とガバナンスに関する理事会提言」のなかで、加盟国における規制改革を後押しするため、(1)政治のリーダーシップの発揮(2)規制プロセスの透明性担保と利害関係者の参画(3)規制監視機関の設置(4)政策プロセスの早期段階でのRIAの実施(5)費用対効果の観点からの既存規制の見直し――等を勧告した。わが国の現状のRIAは宝の持ち腐れに等しく、諸外国の先進事例やOECD勧告を踏まえた制度の改善が求められる。

【産業政策本部】

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