4月22日、東京・大手町の経団連会館で「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」(座長=中西宏明会長、山口宏樹就職問題懇談会座長)の第2回会合が開催された。同協議会は、国公私立大学と経団連との継続的な対話の枠組みとして設置されたもので、第1回会合(1月31日:2月7日号既報)での議論を踏まえて設置された3つの分科会(Society 5.0人材育成分科会、今後の採用とインターンシップのあり方に関する分科会、地域活性化人材育成分科会)での検討状況について中間報告を行い、意見交換した。
また、分科会の検討成果に、今後大学と企業が共同で実施するべき具体的アクションと政府への要望事項を加えた、産学協議会としての「中間とりまとめと共同提言」を承認し、同日公表した。「中間とりまとめと共同提言」の概要は次のとおり。
■ 共有された認識と今後のアクション
(1) Society 5.0時代の人材と大学教育
Society 5.0時代の人材には、文系・理系を問わず、数理的推論・データ分析力、論理的文章表現力、外国語コミュニケーション力などのリテラシーに加え、リベラルアーツ教育を通じて涵養される論理的思考力と規範的判断力、課題発見・解決力、未来社会の構想・設計力、さらには高度専門職に必要な知識・能力が求められる。
こうした能力の育成には、初等教育から高等教育に至るすべての段階で教育が関与し、大学院レベルまでの教育を重視すべきである。また、社会人リカレント教育プログラムの拡充が急務である。
大学教育に関する今後の課題として、データ分析や統計学の教員不足への対応のほか、修士・博士課程に進学するインセンティブや学修意欲の向上につながる、企業の柔軟な採用・人事評価制度への変革などが挙げられる。
(2) 今後の採用とインターンシップのあり方
今後の採用のあり方については、学修経験時間の確保を前提に、これまでの新卒一括(メンバーシップ型)採用に加え、ジョブ型雇用を念頭においた採用も含め、複線的で多様な採用形態に秩序をもって移行すべきである。インターンシップに関しては、目的や意義、内容、期間等について、産学および社会的な共通認識の確立が必要であるが、ワンデーインターンシップについては、教育的意義を持つものとは区別して別の呼称とすべきである。
(3) 地域活性化人材の育成
地域活性化人材の育成に関しては、地域から大都市圏への人材流出が激しく人材の還流が少ないことが最大の課題であり、その解決に向けて、(1)学生と地域との接点の増大(2)地域の産業発展・新産業創出に寄与する人材の育成・活用に向けた産学連携(3)地域大学の運営資金の確保(4)地域の大学間の連携推進――などに取り組むべきである。
今後、タスクフォースを立ち上げ、より詳細な検討を行うとともに具体的なアクションの実施につなげる。
■ 政府への要望事項
政府への当面の要望として、(1)文理融合教育のための大学設置基準および認証評価制度の見直しの迅速化(2)AI、数理統計、データサイエンス人材育成に向けた学部新設の政策的推進(3)個人、法人から大学への寄附促進に向けた税制措置の検討(4)大学による地方創生事業の継続的推進――を指摘している。
【SDGs本部】