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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年7月11日 No.3415 米中「新冷戦」とアジア -白石熊本県立大学理事長が常任幹事会で講演

白石理事長

経団連は7月3日、東京・大手町の経団連会館で常任幹事会を開催し、熊本県立大学の白石隆理事長から、「米中『新冷戦』とアジア」をテーマに講演を聞いた。概要は次のとおり。

世界経済を俯瞰すると、21世紀に入り、欧米の占める地位が低下し、アジアの台頭が顕著になっている。現在は中国が圧倒的な存在感を誇っているが、それも今後それほど長くは続かず、インドや東南アジア諸国などの位置づけが高まるだろう。

軍事支出に関しては中国の伸びが著しく、対米比率でいえば、2030年代には米ソ冷戦終焉期のソ連並みの水準に達するとみられる。それに加えて、インド、韓国、豪州、東南アジア諸国の存在感が強まり、世界の軍事情勢は多極化している。こうしたなか、インド洋と太平洋をまたぐ国と地域(「The Indo-Pacific sea lanes」)において自由で開かれた貿易関係を維持していくことが必要であり、その地図の中央に位置する東南アジアの果たす地政学的重要性がさらに増加する。また、政府を介して軍事と産業の融合が進み、量子、AI、測位などの先端技術の優位性の確保が、産業上も安全保障上も一層重要となっている。

現在の米中の「新冷戦」ともいうべき状況においても、インド太平洋地域と技術の両面での優位性の確保をめぐる争いが行われている。中国は「一帯一路」に象徴されるように、インド太平洋地域における勢力圏の構築に乗り出してきた。米国は新たなCOCOM(対共産圏輸出統制委員会)の構築とも思えるような動きをみせている。「新冷戦」の前線に位置する日本としては、アジア等の新興国の成長を取り込む一方で、科学技術の安全保障管理を実現していくことが課題となる。

成長著しいアジアでは、中産階級の拡大、都市への人口の集中、モバイルをはじめとする急速なIT化の進展が進んでいる。こうした状況はビジネスチャンスでもある。

日本は「豊かで自由で安全・安心な社会」を実現していることで、アジアの人々から高い評価を受けている。日本は米国の同盟国として安全保障、科学技術、サプライチェーン等において米国の動きに対応しつつ、同時に、中国関与も維持し、安全保障と経済成長のバランスを取りながら、「豊かで自由で安全・安心な社会」という社会モデルをアジアと共有していく必要がある。

【総務本部】

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