Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年8月8日 No.3419  指定国立大学法人による企業向けコンサルティング・研修事業について意見交換 -イノベーション委員会産学官連携推進部会

経団連は7月24日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会産学官連携推進部会(五十嵐仁一部会長)を開催し、京大オリジナルの佐々木剛史社長、大西晋嗣取締役、東京大学エクステンションの堀本勝敬社長から説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 指定国立大学法人制度(大西氏)

2017年に導入された指定国立大学法人制度は、大学からの申請に基づいて、大学改革を牽引し世界最高水準の教育研究活動が見込まれる大学を文部科学大臣が指定する制度である。現在、東北大学、東京大学、東京工業大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学の6校が指定されている。

指定された国立大学には、(1)研究成果を活用した収益事業に取り組む子会社を設立できる(出資できる)(2)卓越した人材を確保するために高額の報酬・給与を支給できる――といったメリットがある。東京大学エクステンションと京大オリジナルは(1)によって設立された株式会社であり、企業向けのコンサルティング事業や研修・講習事業を行っている。

■ 東京大学エクステンションの事業概要(堀本氏)

当社は2018年12月に東京大学の100%子会社として設立。Society 5.0実現に向けて、圧倒的に不足するデータサイエンス人材の育成に取り組んでいる。社会人向けに特化した「データサイエンススクール」を今年4月、東京・大手町に開校。経営層、技術マネジメント層、事業実務者、技術者向けの計4コースを設置している。東大の講師陣による直接講義、基礎となる数学理論の理解に重きを置いている点が他のスクールとの大きな違いである。

現在は教育事業に特化しているが、今後は企業向けの個別コンサルティングも検討していきたい。

■ 京大オリジナルの事業概要(佐々木氏)

当社は2018年6月に京都大学の100%子会社として設立。京大の産業界向けワンポータルを目指している。東京・丸の内に東京事務所も開設。「京大の知」を活用した企業向けコンサルティング事業、研修・講習事業に取り組んでいる。

京大に所属する約3000名の研究者のうち、研究成果の知財化に関わる者は200名程度。いまだ認知されていない「京大の知」を「発掘」し、社会へと「解放」することが当社のミッションである。

研究成果のマーケティングは、まず研修・講習サービスを通じて京大の知を広く認知してもらい、次に個別企業向けにコンサルティングサービスを提案・実施するというプロセスで行う。そのなかで、知財のライセンスや起業といった活動が必要な場合は、兄弟会社の関西TLO、京都大学イノベーションキャピタルと協力しながら進める。

◇◇◇

説明を受けて委員からは、産学連携本部との役割の違い、スケーリングに向けた展望、大学教員のコミットメント状況、指定国立大学法人制度の制度的な必要性などについて意見が出され、活発な議論が行われた。

【産業技術本部】