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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年8月29日 No.3420 「統合イノベーション戦略2019」について聞く -イノベーション委員会

説明する松尾氏

経団連は7月31日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会 (山西健一郎委員長、畑中好彦委員長、田中孝司委員長)を開催し、内閣府の松尾泰樹政策統括官から、「統合イノベーション戦略2019について」をテーマに説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

◇◇◇

統合イノベーション戦略2019は今年6月に取りまとめたもの。今後、科学技術基本計画の第6期が開始する2021年4月に向け、議論の段階から産業界とも連携していきたい。

世界が次世代を見据えたデジタル化を進めるなか、日本ではSociety 5.0を進めている。ポイントは、さまざまなデータが社会や生活に入り、深いところでデジタル空間とフィジカル空間がつながること。今はその社会実装が求められている。海外では、ベンチャーが巨大化し、AI、バイオ等の技術に相当な金額が投資されている。それらの状況を踏まえ、国家としてどこに投資していくかを考えて戦略を立てた。

■ 知の源泉

データを集約し連携できる基盤の構築を目指している。一例はモビリティー。現場の声も聞きながら、社会実装のアーキテクチャーをつくり込んでいく。

研究データ基盤システムもつくる。大学等の機関レポジトリー(データの一元的な貯蔵庫)を活用して研究データの管理・公開・検索を促進するシステムを開発しており、来年度には本格運用を予定している。

■ 知の創造

米国は新規研究分野を100%カバーしているが、日本は30%程度という結果が出ている。さらに、共著論文の数が圧倒的に減っており、引用数が落ちている。留学生や社会人が少ないのも問題だ。産学連携も1件当たり200万円程度。大学教員の研究時間も減っている。それら課題の克服に向け、年内に「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」をつくる。

一例が大学・国立研究開発法人の外部化法人。大学の外にもオープンイノベーションの場をつくっていきたい。メリットは、共同研究実施のスピードアップ、企業への提案力向上等である。法律改正も含めて検討していきたい。一方、大学・国研に対する税制上の優遇措置が受けられない可能性がある等の課題もある。

ムーンショット(わが国発の破壊的イノベーション創出を目指し、従来の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発)目標について、JST(科学技術振興機構)とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)に1000億円強の基金を設置。25のミッション目標例がビジョナリー会議から提案された。年末に数個に絞り、来年公募する。

■ 知の社会実装・国際展開

世界的に取り組みが進むスマートシティーについて、国土交通省、内閣府が中心になって官民連携プラットフォームを設置。10月には横浜で3つの大きな会議を開催する。

創業についても平井卓也内閣府特命担当大臣(科学技術政策)が力を入れている。大学を中心とした2、3カ所の拠点都市の構築を目指している。NEDOを中心としたGapファンド(大学の研究成果を活用した事業化支援を目的とした、研究と事業化のギャップを埋めるための資金)等の具体策も展開する。

SDGs(持続可能な開発目標)では、ロードマップをつくる。サプライサイドとデマンドサイドのマッチングを図るプラットフォームの構築準備を進める。主要国際会議等で知見や成果物を国際社会と共有する。

■ 強化すべき分野

  1. AI戦略
    大学・高等専門学校において数理・データサイエンス・AIをすべての学生が学べるようにする。ダブルメジャーも推進する。

  2. バイオ戦略
    9つの市場領域をつくった。産業界と議論して、年内にそれぞれの領域のロードマップをつくる。

  3. 量子技術イノベーション戦略
    米国、EU、中国の投資が激化するなか、日本の強みである基礎、材料を活かし、重点的に投資を行う領域を設定した。年内に最終報告をまとめる。産業界と議論していきたい。

【産業技術本部】

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