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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年11月28日 No.3433 Society 5.0~デジタル革新がもたらす価値共創社会 -「生きる」ことの再開発/常任幹事会で慶應義塾大学の宮田教授が講演

経団連は11月6日、東京・大手町の経団連会館で常任幹事会を開催し、慶應義塾大学の宮田裕章教授から、「Society 5.0=Re-invent our Lives, Co-create Society by Shared Values」をテーマに講演を聞いた。概要は次のとおり。

◇◇◇

デジタル技術とデータ利活用の進展によるデジタル革新(デジタルトランスフォーメーション、DX)によって、個人の生活や行政、産業構造、雇用などを含めて社会のあり方が大きく変わろうとしている。データ利活用を通じて従前より飛躍的に個人にフォーカスしたオーダーメードの財やサービスの提供が可能になることで、経済の軸がマジョリティーのニーズに合わせた「消費する“ものづくり”」から個々人のニーズに合致した「共有する“価値づくり”」へと変わっていく。

データメジャー4社のGAFAの時価総額が2010年代前半に石油メジャーを追い抜いたことが象徴するように、Society 5.0の時代では石油ではなくデータが資源となる。だからこそ、個人データのコントロール権が新しい基本的人権として社会に認識されていくであろう。一方で、データの偏在などによって格差が拡大したり、あるいは監視社会を招いたりといったリスクも存在する。デジタル社会への移行にあたり、どういった社会を構築していくか明確なビジョンを持つことが重要である。

経団連の提言「Society 5.0 ―ともに創造する未来―」2018年11月15日号既報)で明確に打ち出された価値共創というビジョンはすばらしい。企業主導により経済的合理性を重視するアメリカ型、個人のデータコントロール権を重視するEU型、国家の介入を通じて社会的信用を重視する中国型それぞれの強みを取り入れ、ボトムアップで多様かつ多元的な価値をともにつくる基盤を構築することで、誰も取り残さずその人らしく生きる社会を目指すものだ。

わが国が現在直面している人口減少・高齢化・少子化・経済の低成長という4つの課題は先進国のなかでも深刻で、わが国がいかにこの問題を解決していくか世界が注目している。デジタル革新が最も求められているのはヘルスケアの分野であるといえよう。それは画像データの解像度の向上と物流システムとの連動による高度な遠隔医療や、ロボットアシスト技術を超えた全自動手術などの実現といったことにとどまらない。例えば、AIによる診断と個人健診データとの連動により未病段階でのケアも積極的に行うことによって、個々人が適切な時期に適切な助言や治療を受けられる。さらには、予防・未病ケアには娯楽性も取り入れられ、楽しみながら健康を維持し、充実した生活を送ることをデータがアシストする、まさに人生100年時代のためのライフデザインイノベーションが実現しようとしている。

デジタル革新の先にあるのはデータが人々をコントロールするのではなく、人々が社会(産業・行政)との接点をデザインし、それぞれが自分にとって最適な環境を創出する未来である。

【総務本部】

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