経団連は3月17日、「Society 5.0の実現に向けた規制・制度改革に関する提言」を公表した。
少子高齢化と人口減少の急速な進展を背景とした諸課題が山積するなか、わが国経済の持続的な成長には、デジタル革新と多様な人々の創造力・想像力の融合により経済成長と社会課題の解決を両立するSociety 5.0の実現が不可欠である。Society 5.0の早期具体化には、デジタルを前提とした法制度や行政の構築とともに、デジタル革新を支えるデータの取得・活用の促進に向けた環境整備が必要である。そこで、会員企業・団体の要望をもとに、革新的な技術や潮流に関連する85項目の規制改革要望を提言として取りまとめた。
■ 提言の構成
同提言は、「社会課題の解決に向けた規制・制度改革」と「デジタル革新に向けた基盤の確保」においてデジタル革新に向けた具体的な要望事項を列挙している(図表参照)。前者では、少子高齢化・人口減少に起因する社会課題として、(1)生産性の向上(2)社会インフラの整備・確保(3)活力ある地域の実現(4)国民の健康増進――を挙げ、これらの解決に資する要望事項を、また後者では、ICTを活用して社会課題の解決に取り組む企業の活動を後押しする基盤として、(1)デジタル・ガバメントの推進(2)データの取得・活用――をテーマに要望事項を整理している。
■ 要望事項の特徴
提言に盛り込んだ規制改革要望の特徴は以下の3点である。
1点目は、点検や検査におけるデジタル技術の活用である。社会インフラの維持・管理等の実施にあたり、近接目視や打診など人手による点検や検査が中心のため、IоTやAI、ドローン等のデジタル技術で代替し、効率化・高度化を図ることを求めている。
2点目は、有資格者をはじめとする人材の活躍促進である。監理技術者や登録販売者等の有資格者のなかには店舗・施設での常駐が求められたり、専任の要件により担当できる現場が限られたりすることが少なくない。労働力不足を背景に専門人材の維持・確保が難しくなることも踏まえ、ICTの活用により品質を担保しながら常駐や専業の要件を緩和することを要望している。
3点目は、デジタル・ガバメントの推進である。企業におけるデジタル革新を進めるには、事業領域のみならず、バックオフィス業務のデジタル化も欠かせない。そこで、申請や届出等の各種手続きの電子化を中心に、行政のデジタル化に取り組むよう求めている。
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経団連が昨年3月に公表した「規制改革の推進体制の在り方に関する提言」(2019年3月21日号既報)を踏まえるかたちで、政府の「規制改革推進会議」は同年10月に常設の第三者機関として発足した。経団連は同会議と緊密に連携しながら、要望事項の実現に取り組んでいく。
【産業政策本部】