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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年9月17日 No.3468 少子化対策の費用対効果と今後の保育政策 -柴田京都大学大学院准教授が講演/人口問題委員会企画部会

経団連は9月1日、人口問題委員会企画部会(手島恒明部会長)をオンラインで開催し、京都大学大学院人間・環境学研究科の柴田悠准教授から、少子化対策の費用対効果と今後の保育政策について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 少子化対策の費用対効果と政策提案

政府は、希望出生率1.8の実現に向けて政策展開している。既存の研究では、現在約5割である未就学児の母親の有業率が100%になり、かつ待機児童が完全に解消されれば、出生率は1.7まで上がると試算されている。これは、仮に待機児童が完全に解消されても、希望出生率1.8の実現には届かないことを意味する。

また、現金給付の出生率上昇への効果は低所得世帯に限られるとの研究もある。これに基づく試算では、低所得世帯の新生児1人当たり480万円の一時金を給付(年間予算で2.4兆円)すれば、出生率は1.8に届く。しかし低所得世帯のみ恩恵を受ける現金給付を実際に行うには、合意形成が難しい。また巨額の現金給付を行うと、現金目当ての出産に起因する育児放棄が生じてしまう懸念もある。

以上を参考に、OECD諸国のデータを用いた分析により、2045年の出生率を2.07まで引き上げるには、「働き方の柔軟化を通じた平均労働時間の週7時間短縮」「高等教育の学費を各学生一律年額61万円軽減」「潜在的待機児童の完全解消」の3つの施策を組み合わせるべきだとの提案を、過日、政府の有識者会議「選択する未来2.0」で説明した。

■ 保育の長期的効果と今後の保育政策のあり方

待機児童の解消は、短期的な保育の受け皿確保だけでなく、低所得世帯の子どもが保育所に通えるようになることで、虐待等の不適切な養育が減り、発達や社会的スキルの向上を期待できる。これは、長期的にみて、労働力の質、さらには出生率の向上をもたらす可能性が示唆される。

日本では19年10月から、3歳以上の保育が完全無償化された。しかし、無償化が、メリットの大きい高所得者の保育需要を掘り起こし、保育士の配置に余裕がなくなることで保育の質が低下することを危惧している。保育の質が低下すれば、子どもの発達にはマイナスの影響がある。したがって、保育の無償化を一部見直し、幼稚園と同様、上限額を設けることで新たな予算を確保し、保育士の処遇や配置基準の改善、保育の受け皿拡大に活用すべきである。この対応で十分な財源を確保できない場合、経済への悪影響が最も小さいとされる資産課税の活用も検討に値する。

■ 若年層の雇用の安定の重要性

手厚い子育て支援政策で有名なフィンランドの出生率は近年急激に低下し、足元で日本を下回っている。フィンランドの研究者からは、若年層の雇用契約の短期化が主因の一つとして指摘されている。働き方が柔軟化しても、将来の見通しが立つ安定した雇用・収入がなければ、子どもを持つことは難しい。日本でも若年層の雇用を安定化させることが重要な課題である。

【経済政策本部】

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