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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年11月12日 No.3475 「社会的大変容とSDGs」について聴く -企業行動・SDGs委員会

経団連は10月22日、企業行動・SDGs委員会(二宮雅也委員長、中山讓治委員長、吉田憲一郎委員長)を東京・大手町の経団連会館で開催した。東京都市大学の涌井史郎特別教授から、「社会的大変容とSDGs」と題して講演を聴くとともに意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。

■ パンデミックによる社会的大変容

自然災害のひとつである新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界全体の脆弱性が強まっている。気候変動により生態系から生じる多様なサービス(自然の恵み)は今後減衰していくとみられ、地球の未来は極めて危険な状態にある。SDGs(持続可能な開発目標)は自然と付き合うための17カ条の作法とも解釈できるが、このような世界共通の課題に対して強靱さを獲得するには、これまでとは異なる社会を想定し、新しい未来を創るという考えを持つ必要がある。

歴史をたどると、ペストやコレラなどのパンデミックは、新たな文化・文明を生み出して世界の文明史を変えてきたが、その背景には人々の「記憶の共有」がある。新型コロナにより全世界の人々が同じ恐怖を体験することで、一人ひとりの行動変容が起き、社会的大変容へと発展する。これを、持続的な社会へつなげることが重要である。その際、気候変動に対しては、36億年かけて構築されたエコシステムが、産業革命以降のわずか200年間で壊されてしまったことを踏まえ、環境容量を念頭に置いた社会変容を考えなくてはいけない。

■ 日本に根付く自然共生の思想とグリーンインフラ

日本には、自然を受け入れ、共生する思想が根付いており、一例に里山のシステムがある。人が踏み入れない嶽・奥山・外山に対し、その周辺にある里・野辺・野良は人が手入れをして最適に管理し、人間と自然環境の持続可能な関係を構築している。日本人は、自然の力を知り、生態系サービスの限界(環境容量)の範囲で自然の力を制御し、生態系サービスを最大化し、その持続性を担保する知恵を持っている。自然を読む力、棲み分ける知恵、時に「しのぎ」、時に「いなす」という術は、災害と共存するための技でもあり、グリーンインフラの思想でもある。現代のインフラにおいては、経済が優先されてきたが、都市と地域が自然資本財を媒介に循環し、共生する圏域をグリーンインフラによって再構築する必要がある。

■ 求められる企業行動

これからの世の中では、成長だけでなく、成熟、幸福感が社会を支えていく。これまでの経済では、集中、集権、広域、高速、巨大が重んじられていたが、これからは、知識やクリエーティビティーによって新たな産業を引き起こし、クラスター的な構造を持ちながら、エネルギー・情報・サービスへのアクセスをエコロジカルなネットワークで結び付ける共生圏域を構築すべきである。

現代は社会的大変容の入口でしかなく、10年もたてば驚天動地の社会が生まれるだろう。先が見えない未来に対するリスクマネジメント、地球環境への貢献度が投資家にとっての優先項目となりつつあるなか、企業にはフォアキャストではなく、バックキャストの考え方で、時代にフィットしていくことを念頭に置いた行動が求められる。

【SDGs本部】

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