Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年11月26日 No.3477  「2020年米大統領選挙とその後の米国政治」 -常任幹事会で久保東京大学大学院教授が講演

経団連は11月4日、東京・大手町の経団連会館で常任幹事会を開催し、東京大学大学院法学政治学研究科の久保文明教授から、「2020年米大統領選挙とその後の米国政治」をテーマに、まさに選挙の開票作業が進むなか、随時、情勢を確認しながら講演を聴いた。概要は次のとおり。

2016年の大統領選挙は、日本時間で一夜明けたこのタイミングであれば、ある程度見通しがついていた。しかしながら今回は、事前の世論調査ではもっと苦戦すると思われたトランプ候補が健闘しているため、まだ情勢が判断しにくい状況にある。

こうしたことを前提に若干の特徴を指摘すると、今回は投票率が100年ぶりの高水準であることに加えて、世論調査では再び白人低学歴層の投票率が過小評価されているようである。

また、出口調査によれば、共和党(トランプ候補)の支持層は有権者の65%を占める白人が中心とされるものの、そのなかでも票が割れている。とりわけ、白人で高学歴の女性は反トランプであるとともに、最も親トランプ派だった白人で非高学歴の男性の支持も、4年前より弱くなっている。

さらに、新型コロナ対策への不満から、重篤化リスクの高い高齢者層の支持低下や、黒人、ヒスパニック系、アジア系などのマイノリティーは根強く民主党を支持する傾向がある。このように、共和党は従前の支持基盤が揺らぐ一方で、民主党はこれまでの支持層を手堅く獲得している。

トランプ大統領の支持率は就任以降、歴代の大統領と比べても最高と最低の幅が小さいことが特徴である。トランプ大統領は、前例や慣行を覆し多くの政策を実現したことを評価する向きもあるが、発言の信頼性は低く、政策自体への批判もあり、選挙の切り札であった好調な経済も新型コロナウイルスの蔓延によって急激に悪化した。一方でバイデン候補は、その支持がトランプ候補への批判の反射効果でしかないとの声があるように、知名度や存在感でトランプ候補に大きく劣るものの、潤沢な資金による圧倒的な広告量で選挙戦を巻き返してきた。

仮に、バイデン候補の勝利により生まれる民主党政権下で起こる政策的な変化を考えると、国内政策は議会の構成によって大きな影響を受けるとともに、外交面ではEUやNATOなどの国際組織に対しては協調的・協力的になることが見込まれ、全体として米国の世界でのイメージは改善するだろう。とりわけ日米同盟そのものはトランプ候補よりも日本の貢献を評価している一方で、中国に対して歩み寄る政策が日本にとって不安要素になり得る。

いずれにしても、現段階では正確な見通しはできないため、引き続き今後の趨勢を見守りたい。

【総務本部】