経団連の労働法規委員会国際労働部会(市村彰浩部会長)は11月13日、オンライン会合を開催し、亜細亜大学の権丈英子教授から「オランダにおける働き方の現状と課題」と題する講演を聴くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。
オランダは、非典型労働者を増加させるなど柔軟な働き方を推奨することで就業率を上昇させ、人的資源を有効に活用し、男女ともに働く「参加型社会」へと転換した。現在は労働時間の柔軟性から就業場所の柔軟性へと「新しい働き方」を模索している。
一つの社会における労働力の活用は1人当たり労働時間×労働者数で表わされるが、日本は従来男性中心で女性が少なく、1人当たりの労働時間が長い分業型のパターンである。
一方、オランダは男性も女性も働き、1人当たりの労働時間が少ないが労働者数が多い参加型のパターンである。生産年齢人口が減少し労働力が希少になる「労働力希少社会」では、育児・介護等で長時間労働できない労働者も含めて労働参画を促していくことが不可欠であり、日本も参加型へと移行せざるを得ない。
オランダは新型コロナウイルス感染症の流行前からテレワークが多かったが、新型コロナ後にさらに広がった。2014年の調査では、企業がテレワークを導入する主な理由として、生産性向上、仕事と私生活のバランスの向上、通勤時間の削減等を挙げている。一方、雇用者が在宅勤務する理由としては、仕事を遂行するため、業務効率・集中するため、通勤時間の節約のためが挙げられている。また16年には従業員10人以上の企業において、労働者が、労働時間の長さ、就業場所、働く時間帯の変更を申請する権利を認めたフレキシブル・ワーク法が施行されている。
「オランダ病」といわれる停滞の時期から「オランダの奇跡」と呼ばれる成長へと転換した契機は、1982年のワッセナー合意である。これ以降、女性が働くことに対して保守的だったオランダは労働市場政策を大転換し、正社員の短時間勤務を可能にする一方、パートタイム労働の待遇改善を進めることで、女性の就業率を高めた。オランダでは男女ともにパートタイム労働者の比率は高いが、フルタイム労働者とパートタイム労働者との間の賃金格差は小さい。
一方で日本ではフルタイム労働者とパートタイム労働者との賃金格差は大きい。そのため、家計補助的でない非正規労働者が増えるなか、両者の格差が社会問題化しているし、その問題は拡大していくおそれもある。
日本の働き方改革も分業型社会から参加型社会への転換は必須であり、その動きを先読みしながら進めていく必要がある。
【労働法制本部】