Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年12月17日 No.3480  企業・社会のレジリエンスを高める危機管理のあり方について聴く -社会基盤強化委員会企画部会

説明する福田氏

経団連は11月20日、社会基盤強化委員会企画部会(大知久一部会長)をオンラインで開催した。近年激甚化する自然災害や新型コロナウイルスの感染拡大のような危機において被害を最小限に抑え、経済活動の早期復旧につなげるためには、国や地方自治体の役割・権限の明確化、民間も含めた各主体の連携、国全体としての非常事態に対する体制構築が課題である。そこで、日本大学危機管理学部の福田充教授から、国、自治体や企業における危機管理のあり方について説明を聴いた。概要は次のとおり。

元来、「リスク」は地震や水害など自然を原因とし、それらを回避するために科学技術や社会制度が進化してきた。ところが、現代ではそれらの技術や制度がサイバー攻撃や金融危機といった新しい危機を生み出している。こうした多様なリスクに対応するには「オールハザード・アプローチ」の視点が重要である。

危機管理においては、(1)インテリジェンス(情報収集・分析)(2)セキュリティ(危機の発生・拡大を食い止める対策)(3)ロジスティクス(危機対応に必要な物資の準備)(4)市民に対するリスク・コミュニケーション――の4つの要素が機能する必要がある。なかでも、インテリジェンスが最も重要と考えられるが、日本の新型コロナ対策においては、中国・武漢での事態発生後の情報収集・分析活動に遅滞がみられた。地方自治体や企業についても、インテリジェンス機能を強化する必要性が浮き彫りになった。

日本政府はこれまで、さまざまな危機が発生するごとに特別措置法をつくり対応してきた。今般の新型コロナ対応としても、新型インフルエンザ等対策特別措置法が改正されたが、同法が従来想定していた「感染力の強さ」や「全国的蔓延」といった要件と矛盾が生じ、強制力のある感染症対策を講じることに難しさがあった。リスク対応に特化したいわゆる「日本版CDC(疾病予防管理センター)」の創設や、感染症法などの法律と特措法を結びつけるなど、平時から危機に備えておくことが重要である。これは、本来は平時から危機対策を検討し準備することが目的であるリスク・コミュニケーションにおいても同様である。また、特措法のもとの緊急事態宣言は、政府による宣言の発出に基づいて、都道府県が主体となって対応するという構図になっており、それぞれの役割の明確化が課題となっている。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】