経団連は12月17日、通商政策委員会(早川茂委員長、中村邦晴委員長)をオンラインで開催し、経済産業省通商政策局の広瀬直局長から、通商政策をめぐる最近の動向について説明を聴いた。概要は次のとおり。
新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大するなか、各国・企業はウィズコロナの戦略に関する競争を激化させている。米国では、バイデン新政権が発足する見込みであり、主要国は新政権誕生を踏まえた動きを強めている。わが国もこうした変化を先取りし、産業戦略と対外政策を一体で進める必要がある。
■ 主要国の動向・情勢
米国では、新政権誕生により、従来の一国主義から国際協調路線へと回帰することが予想される。しかし、当面は自国の雇用、産業、投資の改善に注力するだろう。対中政策は、強硬路線という方向性は大きく変わらないものの、今後は同盟国と協調して対応する手法に変わると思われる。また、気候変動対策は、パリ協定への復帰など脱炭素化の方向にかじを切ることが見込まれ、部分的に中国と連携を模索することが考えられる。
欧州では、中国との関係を地政学的な観点からとらえ直す動きがある。人権問題では中国に物を言い、環境分野では協力関係を構築するなど是々非々の対応をとることが予想される。また欧州は「グリーン」と「デジタル」を戦略分野に特定し、今後両分野におけるサプライチェーンの構築とルールづくりの主導権を握る戦略を展開していくだろう。
中国は、国内の生産・流通・消費を基本としながら、自律的なサプライチェーンを構築する、国内・国際の双循環の方針を打ち出している。特にコア技術の国産化を目指し、サプライチェーンの構築にあたってもこうした観点から自国に有利な経済圏・国際ルールづくりを志向している。こうしたなか、中国は2020年11月にCPTTPへの参加を検討する旨を表明し、その意図するところに注目が集まっている。
■ 戦略分野ごとに各国・地域と連携した対応を推進
新型コロナを契機に、「サプライチェーンの強靱化」が世界中でキーワードになった。わが国は、米欧、ASEANなどの有志国との連携により、地域およびグローバル規模で自由で公正な経済秩序・経済圏の構築を進める必要がある。また、わが国は激しさを増す技術覇権獲得やイノベーション競争のなかで、米中双方の安全保障関連規制強化への対応に迫られている。技術流出に十分留意しつつも、イノベーション先進国となった中国のテストベッドとしての活用や、ベンチャー企業との連携を模索していくことも考えられる。
デジタル分野においては、中国やアジア各国、インド等でデータの国外移転等に厳しい規制が設けられている。データの取り扱いに関しては、米欧間でも価値観やルールが大きく異なるなか、わが国としてルールづくりの橋渡しの役割を担っていきたい。
カーボンニュートラルの分野では、バイデン新政権発足を契機に、今後、米欧は急接近するとともに、中国との連携を模索する可能性がある。菅内閣は2050年までにカーボンニュートラルの目標を掲げており、米欧と連携しながらグリーン成長戦略を進めていく。
このような情勢のもと、今後戦略的な観点からわが国としても官民一体で攻めの姿勢で対応していかなければならない。
【国際協力本部】