経団連は1月26日、生活サービス委員会企画部会(河本宏子部会長)をオンラインで開催し、今後の価値観の変化に親和性が高いとされるZ世代の特徴について、ビジネス・ブレークスルー大学の斉藤徹教授から説明を聴いた。概要は次のとおり。
Z世代の年齢層は諸説あるが、私は25歳(1996年生まれ)から10歳までと定義している。この世代は成長の過程で、テクノロジーの進化による社会の劇的な価値観の変容である「ソーシャルシフト」を経験している。
ソーシャルシフトは3つのパラダイムシフトで構成される。インターネットにより誰もが参加可能な仮想空間が発生。その後、金融危機と同時に出現したソーシャルメディアが仮想空間の活用を加速させ、人とのつながりを深めた。そして、コロナショックがこれまでの流れを加速化し、チャットの利用などから協働へのシフトが進んだ。
Z世代は「ソーシャルシフトした若者」「ソーシャルネーティブ」であり、「民主的でリベラルは当たり前」という世界共通の特徴がある。日本のZ世代については、これに加えて「将来が不安なため経済的には保守的である」という特徴がみられる。背景には、日本の今後を悲観的に考えており、自身も、親からの仕送り額の減少などから、経済的なゆとりがないことがある。
収入が減ってきているものの、買い物は好きで、さらにコト志向がある。
また、豊かな暮らしに一番必要なものは家族や友達とのつながりであり、毎日SNSと向き合っている。
1つ前のY世代(81年~96年生まれ)との違いを端的に表すものとしては「1つのSNSで複数のアカウントを使い分けている」という点がある。その理由として、中学校・高校・大学で友達ができ、卒業してもつながりは途切れないことがある。増え続けるつながりの維持には、価値観や人間関係の多様化を理解し、各コミュニティーで別の顔をしながら、自分自身の居場所を常に探っていることが考えられる。
Z世代に浸透している消費行動の主なものとしては、「自分が気に入れば、ブランドは気にしない」点が挙げられる。これは「多様性と個性を重んじる価値観」の反映と考えられる。また、「感動の瞬間を撮って共有したい」点もあるが、SNSによる炎上を見聞きし、自身も経験することで、自分を理解してくれる「内輪」と喜怒哀楽をシェアすることを大切にしている。
ソーシャルシフトが進むなかで、今の社会は、透明性が上がり、ポジションパワー(組織から付与された力)よりも、リレーションパワー(個人の知識や技術が生む力)が、強くなっている。Z世代の価値観は時代の変化を象徴するものであることから、自分とは異なると遠ざけるのではなく、新しい価値観だととらえることが、今後の経済社会を考えるうえで有益である。
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生活サービス委員会は、ポストコロナにおける生活サービス産業の新たなビジネスモデルの深掘りを活動テーマとしている。同部会では、コロナ禍における価値観の変化が消費行動に与える影響の把握に取り組んでいる。
【産業政策本部】