経団連東亜経済人会議日本委員会(飯島彰己委員長)は3月17日、最近の台湾情勢に関するオンライン会合を開催し、日本台湾交流協会の谷崎泰明理事長ならびに日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の佐藤幸人研究推進部長から、台湾の政治・経済情勢および半導体産業の発展の経緯と展望について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 新型コロナの抑え込みに成功した台湾
第2期蔡英文政権は、IT技術を活用して新型コロナウイルスに迅速に対処して抑え込みに成功した。極めて高い支持率を維持し、国際社会からも注目を集めている。
経済面では、半導体の輸出拡大や経済振興策による内需喚起などにより、2020年のGDP成長率は約3%と、世界トップクラスとなる見通しである。台湾当局は、産業構造の高度化に向けた改革や中国からの投資回帰を推進している。また、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)参加に向けて取り組んでおり、今後の動向が注目される。
日本と台湾には長年の友好関係があり、台湾の人々にとって好感度が最も高い国は、群を抜いて日本である。同様に、日本にとって台湾は基本的な価値を共有する重要なパートナーであり、大切な友人である。ポストコロナにおいて、経済、社会、文化などさまざまなレベルでの交流が再開し、日台の連携を通じてその紐帯の強化を期待している。
■ 台湾における半導体産業の誕生と躍進
昨今、米中対立の激化、デジタル化の急速な進展、車載半導体の不足なども相まって、TSMCをはじめとする台湾の半導体産業は、国際的な政治・経済におけるキープレーヤーとなった。
1980年代、後発で半導体産業に参入した台湾勢は、ウエハー加工の受託、「ファウンドリ」を専業とするユニークな業態を選択した。当初、ファウンドリは、資金と人材が限られているがゆえの苦肉の戦略であった。しかし、2000年代にかけて、世界の半導体産業のファブレス化(工場を持たない経営)、ファブライト化(設計に重点を置き、生産能力を減らす経営)という構造変化にうまく適応した。その結果、台湾勢は世界中から半導体製造を受託し、今日では他の追随を許さない技術力を備えるに至っている。
日本にとって、これからのデジタル化時代にファウンドリに強みを持つ台湾の半導体産業との連携を深めることが極めて重要であり、ファウンドリに対応する観点から日本におけるファブレスの強化も検討に値する。また、日本勢が強みを持つ半導体素材や製造装置における協力の深化も、引き続き期待される。
【国際協力本部】