経団連は3月26日、セミナー「非常事態に対してレジリエントな事業活動に向けて」をオンラインで開催した。今年2月に公表した提言「非常事態に対してレジリエントな経済社会の構築に向けて」を踏まえ(2月18日号既報)、非常事態における事業継続計画(BCP)の見直しのポイントをMS&ADインターリスク総研が説明するとともに、アステラス製薬、セブン&アイ・ホールディングス、日本通運が、自社の取り組みを紹介した。概要は次のとおり(注=講演者の役職はセミナー開催時のもの)。
■ MS&ADインターリスク総研(府川均リスクマネジメント第四部長)
新型コロナウイルスによる社会の変容をきっかけに、事業継続を取り巻く環境は急速に変化した。
従来想定していた自然災害に加え、感染症を含む複合災害のリスクを想定したBCP/BCM(事業継続管理)の見直しが不可欠である。
今後は、特定のリスクごとに影響を想定する「シナリオベース」から、「結果として生じる事象」をベースに再構築した「オールハザード型」BCPへの転換が求められる。
実務的には、既存のBCPを活かしつつ、オールハザード型のBCPを追加して、相互補完することが有効である。
■ アステラス製薬(川村丹美コーポレート・リスクマネジメント部課長)
非常事態においても医薬品提供を続けるという製薬会社の責務を果たすため、グローバルレベルでリスク管理を行っている。「災害のタイプにかかわらないBCP」という考え方のもと、優先すべき業務をあらかじめ決めておき、使えるリソースが限られる非常時でも必要な業務を継続できるよう、サプライチェーン全体を意識したBCP管理を進めている。
■ セブン&アイ・ホールディングス(千本圭輔総務部渉外担当)
総論規定である「事業継続基本計画」と各論規定である「事業継続計画」の二階建て構造でBCPを整備している。各論規定では、大地震編、風水害編、富士山噴火編、感染症編と、個別の対策書を用意している。また、非常事態に備える平時の対応として、燃料備蓄基地の設置、独自開発の災害支援システム「セブンVIEW」の構築など、災害情報、交通情報等を一元的・自動的に集約できるよう備えている。
■ 日本通運(溝田浩司業務部長)
非常事態に際して優先的に輸送する物資をあらかじめ明確化し、災害輸送を繰り返し経験するなかで知見を蓄積してきた。物資輸送全体を俯瞰し、最適な物資輸送を実現する観点から、(1)輸送量のコントロール(2)二次拠点の整備(3)最終拠点からのラスト・ワン・マイルの配送体制整備――を進めている。こうしたBCPや平時からの準備に加え、災害時に対応する「人のしなやかさ」を高める訓練を徹底することも重要である。
経団連は、引き続き、社会基盤強化委員会を中心に、レジリエントな事業活動に向けた取り組みを推進していく。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】