経団連は4月12日、企業行動・SDGs委員会企画部会(上脇太部会長)をオンラインで開催し、慶應義塾大学大学院の蟹江憲史教授から、SDGs(持続可能な開発目標)の進捗管理とモニタリングについて講演を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ SDGsの進捗管理をめぐる動向
SDGsは「目標ベースのガバナンス」といわれるように、国連は細かいルールを決めておらず、国や各ステークホルダーが主体的で自由に取り組み、グローバル指標により評価・レビューすることを求めている。
国連では、2020年以降の10年間をSDGsの目標達成に向けた「行動の10年」と位置付けている。行動の加速化のため、国際機関、政府・自治体、企業・投資家等あらゆるセクターの間で、取り組みの進捗評価を重要視する傾向が増している。
自身が代表を務めるコンソーシアム「慶應義塾大学SFC研究所 xSDG・ラボ」では、政府・自治体・企業と共にさまざまな研究を進めており、その一環として「企業のためのSDG行動リスト」を公表した。SDGsのゴール・ターゲットや既存の指標では、企業の行動に落とし込みにくいという課題がある。同リストでは、SDGsに則した具体的取り組みを例示しながら、評価のための基準を提供している。
■ ポストSDGsに向けた動向
30年以降を見据えた大きな目標を掲げる企業が出てきている。研究者で組織されたアース・コミッションでは、科学に基づいた温室効果ガスの削減目標「サイエンス・ベースド・ターゲット」を生物多様性、土地利用、水資源、海洋など、気候変動以外の分野に応用することについて検討している。ここで設定された目標や実現に必要な科学的根拠は、ポストSDGsの目標設定の基盤になる可能性がある。プラネタリー・バウンダリーを超過せず地球にとって安全であること、SDGsの文脈で公正(誰一人取り残さない状態)であることを軸に、ターゲットのあり方を検討している。
また、欧州を中心に、ポストSDGsに向けた動きが盛んになる見込みがあり、注視する必要がある。
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意見交換では、「国として明確な目標・KPIが整備されれば、企業として測定・評価に取り組みやすい」という意見に対し、蟹江氏は、「SDGs達成に向けて、総合的な取り組みが求められる。産業界の取り組みでは、2つ以上の事象を組み合わせて効果を生み出している場合が多く、複合指標の整備が重要。産業界からも声を上げてほしい」とコメントした。
蟹江氏の講演後、企業や各種機関のSDGsに資する取り組みの測定・評価について意見交換した。経団連では、現状と課題を分析した報告書を6月に公表予定である。
【SDGs本部】