本連載では、米国をより深く知るため、広大な米国を構成する50州+1特別区の情報を順次ご紹介します。
4.ニューハンプシャー州
アメリカ独立宣言の採択より6カ月早く、1776年1月に独自の政府を樹立し、憲法を定めた州である。
政治面での特徴は、大統領選の各党指名候補者を決める予備選挙を全米で最初に行う点である。直前のアイオワ州党員集会と並び、大統領候補を占うイベントとして、毎回広く耳目を集める。
州のモットーは“Live Free or Die”であり、自由や小さな政府を重視する伝統がある。税制面では、日本の消費税に近い売上税が基本的にゼロであり(ただし外食、電気、通信、レンタカー等には課税)、観光や商業の促進につながっているとされる。給与に対する州所得税もゼロである(別途、連邦税がかかる)。一方で、固定資産税率は2%超と米国でも五指に入る高水準である。
メイン州との州境であるピスカタクア川沿いに位置するポーツマスは、日露戦争講和条約締結の地である(厳密には調印の地であるポーツマス海軍造船所はメイン州域内の中洲に位置)。当時史上最大であった現代戦を終結させた意義、講和を仲介したセオドア・ルーズベルトのノーベル平和賞受賞等を踏まえ、同州は、2010年、条約が締結された9月5日を「ポーツマス条約の日」と定めた。
5.ロードアイランド州
マサチューセッツから追放された清教徒の牧師ロジャー・ウィリアムズによって設立。政教分離と信教の自由に基づいて初めて組織された政治体から興った州である。
50州のなかで面積が最小で、滋賀県とほぼ等しい(約4000平方キロメートル)。人口は100万人と、140万人の滋賀県よりも少ない。
かつて工業化で米国をリードした地域であり、軍事産業や海洋関連産業が盛んである。また、Fortune 500で4位を占めるヘルスケアの雄、CVSヘルスが本拠を置いている。
主要都市のニューポートは、日本に開国を迫ったマシュー・ペリー提督の出身地である。黒船来航を受けて開港した下田市とニューポートは1958年から姉妹都市として提携している。大西洋岸の景勝地としても有名で、19世紀後半から20世紀前半に建設された豪華絢爛な別荘が立ち並んでいる。
6.バーモント州
グリーンマウンテンズと呼ばれる山脈が州を南北に貫く。積雪のある冬でも青々とした常緑樹に覆われた緑の山(仏語で「Verd Mont」)が連なる風景は、州名「バーモント(Vermont)」の由来にもなったとされる。
雄大な自然を背景とする観光業が産業の重要な柱であるとともに、コンピューター産業、機械産業も盛んである。州人口が約62万人と、ワイオミング州に次いで少ないことが主因で、州GDPは約340億ドルと50州で最少にとどまっているが、1人当たり平均所得は約5万9000ドルで、全米平均程度となっている。
2016年と20年の大統領選に名乗りを上げた「民主社会主義者」バーニー・サンダース上院議員と上院仮議長(多数党の最古参議員が務める)のパット・レイヒー議員を連邦議会に送り出している州でもある。
【米国事務所】