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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年7月29日 No.3509 スタートアップ視点からのオープンイノベーション -イノベーション委員会企画部会

経団連は7月9日、イノベーション委員会企画部会(江村克己部会長)をオンラインで開催し、Vanguard Industriesの山中聖彦代表取締役から、スタートアップ視点からのオープンイノベーションについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ イノベーション創出の壁

今日、製品などが普及するかどうかは、短期間で決まってしまう。このため、長期の将来予測に基づいた開発投資の判断や、市場の開拓、シェアの維持が難しくなっている。迅速なイノベーション創出と早期の社会実装が不可欠だが、さまざまな「壁」がある。

大企業では、アイデアやテクノロジーのコンセプトが良くても、ビジネスになるか、市場があるかわからない、あるいは既存事業を毀損する可能性がある場合は、会社として取り組みを進めるのが難しいケースが多々ある。

スタートアップとの連携がその解決策のひとつで、スタートアップの事業領域が、高い成長やスケールをもたらすと期待される。一方、スタートアップは事業モデルが不確かであることから、連携が必ずしもうまくいっているとはいえない。シリコンバレーのスタートアップにおいても生存率は5%程度ともいわれており、数多の失敗の上にイノベーションが成り立っている。多くの日本企業はそのような不確実なスタートアップに対する投資を決断できないのが現状である。また、国際的にみても、日本におけるベンチャーキャピタルの投資額、スタートアップの買収件数は低い水準にある。

特に調達、製造を伴うハードウエア産業におけるイノベーション創出は難しい状況である。3Dプリンターなどの製品、電子機器の受託製造であるEMSといった製造手法に加え、クラウドファンディングなどの投資方法が一般化することで、ハードウエア産業も大きく成長する企業が現れるといわれていたが、実際はソフトウエア産業に比べ成功事例は多くない。

■ 日本におけるオープンイノベーションの展開

上述のような課題を解決するために、日本の産業界、商習慣を踏まえたさまざまな協業、オープンイノベーションの取り組みが生まれており、成果が出始めている。その取り組みは、(1)出島的組織を資本的に切り離して別立てで組織をつくり最終的に買収する方法(2)出島的組織により企業内起業人材を育成する方法(3)知的財産を活用する方法――など3つに分類できる。当社は3つ目の方法で大企業と連携しベンチャービルダー事業に取り組んでいる。技術やマーケットが不確実なシーズを一定期間引き取り、企業に代わってプロトタイプの開発、実証を進めることで将来性のあるビジネスに育て企業に売却する。このような事業によるテクノロジーの社会実装、イノベーションの創出を通じて持続可能な社会の実現への貢献を目指していく。

【産業技術本部】

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