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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年8月5日 No.3510 新型コロナウイルスを契機とした生活や消費の価値観の変化 -生活サービス委員会企画部会

経団連は7月14日、生活サービス委員会企画部会(河本宏子部会長)をオンラインで開催し、野村総合研究所の林裕之主任コンサルタントとポケットマルシェの高橋博之代表取締役から、新型コロナウイルスの感染拡大を契機とした生活や消費における価値観の変化、今後の消費のあり方等を聴くとともに懇談した。概要は次のとおり。

■ 「新型コロナウイルス感染拡大が日本人の消費行動に及ぼす影響」林氏

当社の「新型コロナウイルス感染拡大による生活への影響調査」等の結果から、(1)外食の利用を控え、宅配サービスを利用するなどの「巣ごもり消費」の定着(2)密を避けるため、日常の買い物をインターネットで行うなどの「デジタルシフト」――の2点が、コロナ禍での消費行動の顕著な変化として確認できる。

消費者の価値観については、長期トレンドとして、「安さ重視」から「付加価値重視」にすでに移行している。「安さ」から利便性を求めるだけでなく、「非日常感を楽しむために多少値段が高くても、品質が良いものを買いたい」などへの変化が新型コロナによる外出制限も背景に加速している。

さらに、自宅で過ごすことが長くなったことで、生活環境を見直す機会が生まれた可能性もある。できるだけ長く使えるものを買うなど、環境を意識した消費価値観も若年層を中心に定着しつつある。

■ 「価値共創による今後の消費のあり方
~産直ECで消費者と生産者の共助の関係を推進」高橋氏

新型コロナを契機に当社のビジネスは拡大したが、新型コロナ前から、モノを買うことへの消費者意識の変化があったことに注視すべきである。モノがあふれるなかで、暖炉やレコードなどが売れるなど、機能性よりも「意味」を求める動きがすでにみられていた。また、消費だけでは満足せず、自らが生産にかかわることへの興味も増している。こうした変化と新型コロナが相まって、生産者と消費者が直接つながる流通形態が拡大した。

このつながりは、さまざまなコミュニケーションを活性化する効果がある。漁師からの出荷連絡は食卓への家族の期待値を上げ、到着後には、魚をさばくなど手間をかけるなかで、家族間での会話が生まれる。食後に生産者へ感想を伝えることで、生産者はまた頑張ろうと考える。

生産者と消費者のつながりの効果は多岐にわたる。漁業や農業への関心を高め、将来の仕事としても考えるようになった子どもの話、また、死期が迫り、病院の食事が喉を通らなかった老人が、生産者から届く新鮮な食材を楽しみに最後まで幸せな気持ちを保つことができた話などがある。このような話を消費者から聴くと、生産者冥利に尽きる思いである。

こうした経験を通じて、人は幸せ「Well-being」を求めて生きていると痛感している。その土台は良質な人間関係である。私たちはこれからも、食べ物を通じて、顔の見える人間関係を生産者と消費者で育んでいき、Well-beingの実現に貢献していきたい。

【産業政策本部】

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