経団連のヨーロッパ地域委員会企画部会(清水章部会長)は7月7日、オンラインで会合を開催し、ジェトロ・日本機械輸出組合ブラッセル事務所の山崎琢矢事務所長から、日EU規制協力の可能性と課題について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 最近のEU情勢
欧州委員会は、新型コロナウイルス前から優先課題として掲げてきた「グリーン」および「デジタル」、横串で通す政策軸としての「戦略的自立性」の3つを柱として、新型コロナからの復興ならびに中長期の成長戦略を進める方針を打ち出している。今年に入り、この3本柱の政策を具体化するためのイニシアチブが加速しており、貿易政策レビュー、デジタルコンパス、新産業戦略などが次々と公表されている。直近では14の気候変動対策法案(7月14日公表)に続き、タクソノミー関連の制度や水素関連パッケージ等が策定される予定である。また、並行して、データやAI関連の法案についても提案がなされている。復興基金およびEUの通常予算である中期予算計画の各国への配分においても、持続可能な成長へとつなげられるよう、一定割合以上をグリーンやデジタル政策に拠出することを各国に義務付けることとしている。その際、南北問題や東西問題といったEU域内の経済格差を解消しながら、いかに加盟国全体の成長率を向上させるかが課題である。
■ 日EU規制協力の可能性
日EU間で制度の整合性を確保していくためには、「規制協力」すなわち、規格や基準の相互承認に向けた対話や協力を継続することが不可欠である。グリーン分野については、「日EUグリーン・アライアンス」(注)のもと、水素の輸送や浮体式洋上風力、電気自動車、バッテリー、二酸化炭素回収・貯留・再利用(CCUS)などの個別項目ごとに、日欧で具体的な共同プロジェクトを進めつつ、基準や規格などの相互承認に向けて取り組んでいくことが考えられる。まず、化石燃料への依存度が比較的高い中東欧諸国や、日本からの投資を期待しているバルト三国などとの連携を拡大することで規制協力につなげていくことも一案である。また、分野横断的に日EU間の規制協力を進め、サステナブル・ファイナンスを定義付けるタクソノミーの策定や炭素国境調整措置を含むカーボンプライシングについて、日本産業界の意見を反映させることも重要である。このほか、ASEAN諸国における日EU第三国協力の道を模索することも考えられよう。
デジタル分野についても、5Gや次世代半導体などの対外依存の解消、自由なデータ流通の確保、AI規格やサイバーセキュリティにかかる規制の整合性確保などにおいて、今後、日EU間連携のさらなる拡大の可能性がある。
(注)第27回日EU定期首脳協議において立ち上げを発表(5月27日)
【国際経済本部】