経団連および経団連事業サービスは7月6、7の両日、経営法曹会議の協賛により「第121回経団連労働法フォーラム」をオンラインで開催した(7月22日号・7月29日号既報)。
第3回の今号では、2日目のテーマ「今押さえておくべき均等・均衡処遇の実務課題」に関して、経営法曹会議所属弁護士による関連する法律や裁判例に基づく企業実務上の対応策、および参加者からの質問に関する討議等の模様を報告する。
■ 裁判例を踏まえた各待遇に関する検討
パートタイム・有期雇用労働法第8条は、短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇について、通常の労働者との不合理な相違を禁止している。
各待遇の検討や違いを説明するにあたり、前提として、職務内容(業務内容、責任の程度)、職務内容・配置の変更の範囲に違いがあることを整理し、分けておいた方がよい。
基本給について、例えば、正社員は長期に活躍してほしいので職能給、短時間・有期雇用労働者は職務給とした区分けがされていれば、説明はしやすい。ただし、最近増えてきている成果給の割合が高い場合、説明が難しくなることもある。正社員に対する賞与の支給を手厚くすることにより、有為な人材の獲得・定着を図るという目的は一定の合理性が認められるが、業績にかかる賞与は気をつける必要がある。また、短時間・有期雇用労働者に一部でも賞与を支給している場合には、不合理性が否定される傾向にある。
裁判所は、手当や休暇が不合理な相違か否かの判断はするが、その程度は示していない。制度設計においては、労使自治に基づいて判断することが原則である。労使協議の結果、短時間・有期雇用労働者には正社員より少ない手当を支給することとしても、直ちに不合理とはいえないと考える。
■ 今後の人材活用
短時間・有期雇用労働者は雇用調整がしやすい、低賃金で雇えるという存在ではなくなりつつある。少子高齢化のなかで企業の競争力を維持するためには、フルタイムで働く正社員と非正規雇用という二分論的な考え方では対応しきれない。専門知識・経験のある人材を有期で高給で雇用する、フリーランスを活用すること等を含め、会社においてどのような人が必要なのか検討する必要がある。
<質疑応答・討議>
質疑応答・討議では、参加者からの多岐にわたる質問に対し、各弁護士からさまざまな実務的なアドバイスがなされた。
時給制でシフト勤務するパート社員への賞与支給に関して、パート社員についても評価で額を決める方法は人材活用の仕組みが正社員に近くなるため定額制が適切であるという意見があった。
夏季冬季休暇を正社員は有給、時給制有期パート社員は無給とする取り扱いについては、最高裁判決を踏まえると、各企業にさまざまな事情があるとはいえ、より独自の理由がないと不合理と判断される可能性が高いとの見解が示された。
また、寒冷地手当を転勤のある正社員のみ支給することについて、廃止することが合理的という意見が出た一方、正社員同士の公平性の観点も含め考える必要があるとの指摘があった。
【労働法制本部】