Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年9月16日 No.3514  台湾の内政・外交課題と日台関係の展望 -東亜経済人会議日本委員会

小笠原氏

経団連の東亜経済人会議日本委員会(飯島彰己委員長)は8月24日、オンライン会合を開催し、東京外国語大学大学院総合国際学研究院の小笠原欣幸教授から、台湾政治および中台関係の現状と展望について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 台湾統一を目指す中国と蔡政権の対応

中国にとって台湾統一は「中国の夢」の実現に不可欠であり、習近平国家主席も自らが決着をつける旨、表明している。習主席の本気度は歴代政権と比較しても高い。

これに対し、台湾の蔡英文政権は、台湾独立の理念を封印しつつも、中国には屈しない強い姿勢を打ち出している。台湾社会には「台湾は中国とは別」という「台湾アイデンティティー」が広く定着しており、民意の多数派も蔡政権を支持し、中国になびくことはない。

■ 不安定な台湾政局と主要な選挙の見通し

このような中台関係は、台湾政治において国民党に不利に作用し、民進党に相対的な優位性をもたらしている。しかしながら、2018年の統一地方選挙において民進党が大敗したように、台湾政局は単純ではない。歴史的に台湾の民意は単一勢力の強大化を警戒する傾向がある。政権批判は常に大きく、民進党を支持しない有権者も一定程度存在する。そのため、22年の統一地方選挙では、民進党にとって厳しい選挙となる可能性が高い。他方、24年の総統選挙においては、「台湾のあり方」が問われることから、「台湾アイデンティティー」の定着した多数派の民意を代表している民進党が優勢となるだろう。

■ 今後の中台関係と日本に求められる役割

こうしたなか、中国は、台湾統一に向けた決意は固いが決め手を欠いており、中台間では、「戦争には至らない軍事的緊張関係」と「経済的には密接な関係」が継続するとみられる。

日本に求められる役割は、米国と連携を深めて、中国による台湾への武力行使を牽制することである。とりわけ重要なのは、民間レベルでの日台交流である。日本と台湾の間には国交がなくとも、経済界をはじめとする広範な交流が実施されている。そのことが中国の台湾統一のコストを引き上げ、また、自由と民主主義を守るという台湾の人々の決意を間接的にサポートしている。日台友好関係を推進する動きとして、直近では台湾に対する新型コロナウイルスのワクチン提供という好事例があった。今後も、こうした日台相互の温かい関係の積み重ねが期待される。

【国際協力本部】