1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2021年10月14日 No.3517
  5. 人口減少日本でこれから起きること

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年10月14日 No.3517 人口減少日本でこれから起きること -人口問題委員会企画部会

経団連は9月16日、人口問題委員会企画部会(手島恒明部会長)をオンラインで開催し、人口減少対策総合研究所の河合雅司理事長から、「人口減少日本でこれから起きること」と題し、人口構造の変化に伴うわが国の経済・社会の変化および必要な施策について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 20年の人口動態と21年の見込み

2020年の出生数は約84万人と過去最少になった。新型コロナウイルスの影響が出生数に表れるのは21年以降であり、コロナ禍での数字ではあるものの、これまでの少子化の延長であるととらえるべきである。

一方、年間婚姻数は新型コロナの影響をすでに受けており、20年4月~21年3月は前年同期比で16.1%も減少している。他の東アジア諸国と同様、結婚と出産がワンセットの文化圏である日本においては、今後の出生数の減少につながることを危惧している。直近の動向を踏まえ、21年の出生数は77万人台になるとみている。この数字は、これまでの政府推計よりも少子化が15年早まることを意味する。

今後の動向は新型コロナ次第だが、今回のコロナ禍が少子化を加速させたことは間違いないと考える。新型コロナの早期収束と、ウィズコロナにおける男女の出会いの機会を確保することが必要である。

■ 世界の課題が変わる

日本だけではなく世界でも少子化は進んでおり、国連は50年までに55の国・地域で人口が減少すると推計している。現在、世界では人口増加に伴う気候変動や食料が問題となっているが、今後は人口減少が新たな課題になる。その際、先に少子化・高齢化を経験している日本がいくつかの解決策を編み出し、国際貢献やビジネスチャンスにつなげていくことが期待される。

■ 激減する社会の支え手

これまで政府はさまざまな少子化対策に取り組んできたが、日本は出産年齢にある女性の人口自体が今後大きく減っていくため、出生数の回復は望み薄である。生まれた子どもは約20年後、働き手・消費者となっていくため、出生数の減少は将来的な働き手不足・内需の縮小につながる。

日本では、物流や公共交通機関におけるドライバー不足や、災害等の予期せぬ事態に対応する自治体職員の不足がすでに起きている。今後は、生活必需サービスを提供する「社会の支え手」の減少が一層深刻化する。

■ コロナ禍がもたらした変化と課題

これまで日本は人口減少を強く意識せず対応してきたが、コロナ禍をきっかけにその転換を迫られている。拡大を図っていた高齢者向けマーケットやインバウンド消費は、新型コロナにより大きな影響を受けている。

消費する「時間」を増やすための24時間営業・深夜営業は、19年のファミリーレストランの事例や終電の繰り上げの検討等、以前から縮小の動きが出始めていたが、コロナ禍により加速している。

今後はデジタル化を含め、深夜時間帯の労働力不足への対応や新たなマーケットの掘り起こしが必要になる。

■ ライフイベントの後ろ倒しの影響と企業の役割

結婚・出産といったライフイベントの後ろ倒しがもたらす影響は、出生数の減少だけにとどまらない。高齢化の進行と相まって、(1)40~50代で親の介護のために離職(2)子どもの成人前に定年退職(3)定年退職後も親が存命で、自分と親との「双方の老後」の対応が必要になるケース等――の増加が想定される。高齢期に住宅修繕が重荷になる、老後の資産形成が難しくなる等、行政による経済的な支援が必要になる高齢者も増える。

企業においては、労働生産性の向上の意味でも社員の介護離職の防止に一層取り組むべきである。高齢者に対しては、終身雇用に限らないさまざまな就業機会の提供、雇用の流動化が必要になる。

【経済政策本部】

「2021年10月14日 No.3517」一覧はこちら