経団連は9月14日、金融・資本市場委員会企業会計部会(石原秀威部会長)を開催し、企業会計基準委員会(ASBJ)の小賀坂敦委員長と川西安喜副委員長から、会計基準等の国際的な動向について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 第3次アジェンダ協議
国際会計基準審議会(IASB)は、情報要請「第3次アジェンダ協議」を公表し、2022年~26年の5年間のIASBの活動計画について、意見を募集している。
ASBJは、以下を骨子としたコメントを提出する予定である。
(1)サステナビリティ基準に関する審議会が設立され、IASBのリソースが必要となる場合であっても、国際会計基準(IFRS)の開発のために利用するリソースは維持すべきである。
(2)IASBは、短期的に解決が可能なプロジェクトだけでなく、合意形成が困難なプロジェクトにも時間をかけるべきである。また、プロジェクトの選定においては、「米国会計基準とのコンバージェンス」は考慮すべき重要な要因である。
■ のれんおよび減損
企業買収により生じる「のれん」の会計処理について、IFRSでは償却をせず、減損処理を行うのみである。IASBはディスカッション・ペーパーを公表しこの問題に取り組んでいるものの、のれんの償却処理の再導入については、世界的に意見が分かれている。
IASBでは、9月に償却処理の再導入の是非について暫定決定する予定を延期して、(1)企業結合の開示のあり方(2)のれんの償却処理を導入した場合の課題――を分析したうえで、結論を得ることとしている。
■ 基本財務諸表
IASBは、損益計算書における段階利益の表示を検討する「基本財務諸表プロジェクト」において、損益計算書を「営業」「投資」「財務」の3つに区分することを提案している。
利益指標として重要な「営業損益」を直接定義せずに、他の損益項目の残余とする提案などに、ASBJは強い懸念を表明してきており、今後ともIASBに意見を発信していく。
■ サステナビリティ基準の開発
IASBの母体であるIFRS財団では、国際的なサステナビリティ基準の開発を担う「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」の新設準備を進めている。
これに対し、わが国の主要な市場関係者で構成されるIFRS対応方針協議会(注)は、IFRS財団に対して、わが国として人的・技術的貢献とともに、資金的貢献を行う用意がある旨の書簡を送付した。また、財務会計基準機構(FASF)では、会計基準に加え、サステナビリティ基準に取り組むため、定款を変更する予定である。
◇◇◇
会合ではその後、「第3次アジェンダ協議」に対する企業会計部会としてのコメントを取りまとめ、9月24日にIASBに提出した。
(注)FASF、ASBJ、経団連、日本公認会計士協会、日本取引所グループ/東京証券取引所、日本証券アナリスト協会、金融庁、経済産業省、法務省で構成
【経済基盤本部】