経団連は9月22日、Japan Digital Agenda 2030(JDA2030)に関する懇談会をオンラインで開催し、在日米国商工会議所(ACCJ)の浅井英里子会長、同デジタル・トランスフォーメーション委員会のジェームス・ミラー共同委員長からJDA2030について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ デジタル社会実現に向けたACCJの取り組み
ACCJは、2021年のテーマとして、日米間の強固なパートナーシップ、デジタル社会、持続可能な社会、ヘルスケア・社会保障の4つを掲げ、活動を展開している。09年には、日本のデジタル化の枠組みとして、インターネット・エコノミー白書を公表した。その後、クラウドやIoTの技術が発達し、ビジネス環境も大きく変化して、日本のデジタル化を阻む制約を解決する必要性が生じてきた。そこで、昨年、ACCJのニュー・デジタル・アジェンダ・タスクフォースでの企業インタビューを踏まえ、JDA2030を取りまとめた。
■ 日本のデジタル通信簿・日本独自の制約と強み
日本のデジタル競争力を示す全要素生産性(16~20年の平均成長率)は昨年、マイナス0.11%であり、デジタルに関する各指標(人材、産業、技術、政府、スタートアップ)も世界に比べて後れを取っている。
デジタル化を阻む日本独自の制約として、リスク回避的な文化が挙げられる。創業年数の長い企業が米国に比べて多いため、変化を好まない保守的な経営方針のもと、新規事業に挑戦しにくい企業が多い。政府当局のスタンスを過剰に気にする点も、デジタル化の阻害要因となっている。
一方、日本の強みは、数学と科学に適性を持つ若手人材が豊富で、エンジニアリング・テクノロジー・サイエンスに関する教育・研究環境が整っている点である。このほか、ハードウエア・ロボティクスの開発能力、特許創出力、世界を牽引する自動車産業も強みである。
■ 日本の改革のための大胆な一手
こうした現状分析を踏まえ、デジタル人材プールの創出、産業界のデジタル化による国際競争力の向上、行政・インフラのデジタル化、スタートアップ企業による次世代型ビジネスの構築を目的とした、11の施策を打ち出している。
とりわけ、産業界のデジタル化による国際競争力の向上を実現するために、全要素生産性の数値が比較的高い製造業、小売業、ヘルスケア産業、金融業のデジタル化を重点的に実施すべきである。特に製造業は独自の強みや文化を活かしつつ、新しいツールやビジネス手法を取り入れることが必要である。そのためにも、地方企業を含む企業間で、DX(デジタルトランスフォーメーション)の手法や政府の動き、海外のベストプラクティスについて情報を共有し合う場を設けるべきである。
【産業技術本部】