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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年10月21日 No.3518 イノベーション創出に向けた宇宙関連のスタートアップとの連携 -宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

経団連は10月5日、宇宙開発利用推進委員会の企画部会(原芳久部会長)と宇宙利用部会(田熊範孝部会長)の合同会合を開催した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の石井康夫理事から、イノベーション創出に向けた同機構の取り組みについて説明を聴いた。また、JAXAが実施している宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)に参加しているスタートアップから、事業概要について説明を聴くとともに、大企業との連携に向けて意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ JAXA(石井氏)

JAXAは、政府全体の航空宇宙開発利用を技術で支える中核的機関である。政府の方針のもと、JAXAが行うオープンイノベーションによる産学官連携の取り組みとして、次の3つを紹介する。

1つ目は、次世代航空イノベーションハブの取り組みである。気象が影響する航空機事故を防ぐための技術開発等、異分野・異業種とのオープンイノベーションにより、航空分野におけるハイインパクトな成果の創出を目指している。

2つ目は、宇宙探査イノベーションハブの取り組みである。従来の宇宙関連企業への発注型から転換し、異分野融合によりイノベーションを創出し、宇宙探査等をテーマとした宇宙開発利用の拡大と事業化を目指している。

3つ目は、J-SPARCである。これは、民間事業者等とJAXAとの間のパートナーシップのもと、新たな発想に基づく宇宙関連事業の創出を目指した取り組みである。スタートアップを含む民間事業者と、これまで計34プロジェクトの共創活動を実施している。

法改正により、2021年度からJAXAに出資機能が備わった。その機能の目的は、JAXAの研究開発成果の最大化と社会実装の実現、産業競争力や産業科学技術基盤の維持・強化である。

■ インターステラテクノロジズ(稲川貴大社長)

当社は、ロケットの設計、開発、製造、打ち上げを行うスタートアップである。本社は北海道大樹町にあり、社員数は約60名である。

当社のロケットは2種類ある。今年7月に大樹町で、観測ロケット「MOMO(モモ)」6号機と7号機の打ち上げが成功した。並行して、地球周回軌道上に超小型衛星を打ち上げるロケット「ZERO(ゼロ)」を開発している。

宇宙産業は、地理的かつ産業構造的に、日本が勝てる産業である。北海道には東と南に海があり、ロケットの打ち上げに適している。宇宙産業は先端産業であり、ロケットはサービスを提供するプラットフォームになるだろう。

当社は28社・団体と連携してロケットを開発している。大企業と協力して、エンジニアなどの出向人材を受け入れている。

■ GITAI(中ノ瀬翔CEO)

当社は、宇宙用作業ロボットを開発しているスタートアップである。社員は24名であり、7割が博士号を取得している。

現在、宇宙で作業をするには、手段上の課題が多くある。宇宙で作業ができるのは宇宙飛行士だけであるが、年間のコストが約400億円と非常に高く、安全性のリスクも高い。

宇宙で作業ができるロボットを開発し、コストを100分の1に下げることを目指している。国際宇宙ステーションの修理や点検、衛星の燃料補給や修理をする軌道上サービス、月面基地建設などの作業を想定している。

今年8月、米国のスペースX社のロケットで、宇宙用作業ロボットを打ち上げた。今月、国際宇宙ステーションでこのロボットが実証実験を開始する。

政府には、長期的かつ安定的な調達であるアンカーテナンシーの実施を求めたい。大企業には、スタートアップへの仕事の発注を求めたい。

■ SPACE WALKER(眞鍋顕秀CEO)

当社は、有翼再使用ロケット(スペースプレーン)を開発しているスタートアップである。社員数は約20名である。

昨年から、有人宇宙ミッションが進展している。わが国では昨年6月、宇宙基本計画に有人宇宙輸送の構想が初めて明記された。米国では今年7月、ヴァージン・ギャラクティック社やブルー・オリジン社が有人宇宙飛行を成功させた。

宇宙開発が活発になるなか、地球環境への配慮が重要な課題になる。産学官が連携する体制で、当社は再使用ができ、クリーンな燃料を利用するECO ROCKET(エコロケット)を開発している。

また、大企業と連携して、複合材によるタンクも開発している。従来のタンクでは金属を使っていたが、複合材により軽量化を実現した。タンクはロケットのほか、水素ステーションや燃料電池にも搭載できる。

【産業技術本部】

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