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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年11月4日 No.3520 消費者契約法と消費者裁判手続特例法の見直しに向けた検討状況 -消費者政策委員会消費者法部会

経団連は10月12日、消費者政策委員会消費者法部会(土屋達朗部会長)をオンラインで開催し、消費者庁の黒木理恵消費者制度課長から、「消費者契約に関する検討会」「消費者裁判手続特例法等に関する検討会」の各報告書について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 消費者契約に関する検討会報告書

2019年12月から「消費者契約に関する検討会」を開催し、今年9月10日に報告書を公表した。今後、法制的な検討を進め、次期通常国会への消費者契約法の改正法案の提出を目指す。

(1)消費者の取消権

高齢者や若年者の消費者被害の実態を踏まえ、さまざまな消費者の脆弱性に起因して不当な契約にさらされた消費者が、契約から解放される手段として効果的な、新たな取消権を設けることを提案している。その際、正当な理由がある場合を除くなど、正常な事業活動が取り消しの対象にならないよう調整することが可能な規定とする。

(2)「平均的な損害」の額の立証責任

消費者契約法では、契約の解除に伴う損害賠償または違約金が「平均的な損害」の額を超える部分を無効とすることが定められており、「平均的な損害」の額の立証責任は消費者側にある。他方で、主張立証のために必要な情報は事業者が保有している。立証責任の負担を軽減する特則として、消費者側が一定の要件を満たした場合には、事業者にも一定の説明を求める制度を設ける。

また、消費者の多様なニーズに対応するため、同じ商品やサービスに複数の価格を設定する場合に、必ずしも損害の発生を前提として違約金を定めていない商品やサービスも生じている。こうした状況等を踏まえ、将来的な検討課題として、「平均的な損害」の概念を見直すこととする。

(3)不当条項

信義則に反する場合に「不当条項」として無効となる条項の例として、「所有権等を放棄するものとみなす条項」「消費者の解除権の行使を制限する条項」を新たに例示することを提案している。

■ 消費者裁判手続特例法等に関する検討会報告書

16年10月に施行された消費者裁判手続特例法では、国の認定を受けた特定適格消費者団体が、消費者に代わって集団的な被害回復を求めることができる二段階型の訴訟制度を定めている。同制度の運用が一定程度積み重ねられてきたことを踏まえ、今年3月から有識者検討会を開催し、10月8日に報告書を公表した。今後、法制的な検討を進め、消費者契約法と同様、早期の法改正を目指す。

(1)対象となる請求・損害の範囲

慰謝料等の所定の損害は、個別消費者の債権の適切・迅速な判断、被告事業者側の係争利益の把握の可能性といった観点から、一律に同制度の対象外とされてきた。そのために、大学入試での得点調整事案では、慰謝料が中核的な請求になり得たにもかかわらず、同制度での請求ができなかった。

そこで、請求・損害の範囲についてよりきめ細かく類型化し、画一的に算定される慰謝料は一部を除いて同制度の対象とすることが考えられる。他方で、慰謝料を同制度の対象とすることについて基本的に反対する立場からは、財産的損害とあわせて請求される慰謝料に限って対象とすることが考えられるとの意見等もあった。

(2)対象消費者への情報提供のあり方

1段階目の手続きで事業者の責任が認められた場合、対象消費者へ情報を提供する必要がある。このときに事業者の連絡の方が消費者にとって受け入れやすく、効率的な場合もある。また、団体が負担する費用は、究極的には消費者の負担となるので、特に被害額が小さいものは費用倒れになるおそれがある。

そこで、1段階目の手続きで、すでに事業者の責任が認められていることも踏まえ、事業者について、対象消費者への個別連絡および公告に関する一定額の支払い義務に関する規定を設ける。その実現手段については、基本的に当事者間の対応に委ねることや、裁判所において判断することを検討していく。

【経済基盤本部】

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