APEC唯一の公式民間諮問団体であるABAC(APECビジネス諮問委員会)はこのほど、2021年の「APEC首脳への提言書」を取りまとめた。ABAC委員に任命されている遠藤信博氏(日本電気会長)、中曽宏氏(大和総研理事長)、國分文也氏(丸紅会長)、代理委員の松木俊哉氏(日本電気執行役員常務)、今村卓氏(丸紅執行役員)が、11月9日に萩生田光一経済産業大臣、小田原潔外務副大臣、11日に岸田文雄内閣総理大臣を訪問し、それぞれ同提言書を建議した。
ABACは、1995年のAPEC大阪会議においてAPEC首脳が「ビジネス界の声」を直接聴くための組織として設立が提唱され、96年に発足した。APECに参加する21カ国・地域の各首脳が、それぞれの国・地域のビジネス界の代表者として指名したABAC委員(61名、2021年11月現在)により構成されている。
今年のABACはニュージーランドが議長国を務め、「人、場所、繁栄」を全体テーマに掲げ、「地域経済統合」「持続可能性」「包摂」「デジタル」「経済」の5つの作業部会を設置した。各作業部会に取り組み課題ごとに設けられたタスクフォースが計35回のオンライン会議を重ね、今年の提言書を取りまとめた。
ABACは、「2020年までに自由で開かれた貿易・投資を達成する」ことを掲げた「ボゴール目標」後の方向性を示す「APECプトラジャヤ・ビジョン2040」の完全かつ意欲的な実現を支援している。同ビジョンをABACのテーマ別取り組みを包括するものと位置付け、毎年の進捗確認や早期の成果を求めている。
今年の提言書の主な内容は次のとおり。
- 地域経済統合=アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)実現に向けた進展等
- 持続可能性=カーボンニュートラル、エネルギーレジリエンス実現等
- 包摂=デジタル経済への女性参画促進、ジェンダー包摂拡大等
- デジタル=貿易とサプライチェーン連結性のためのデジタル・システムの相互運用性等
- 経済=構造改革の推進、災害リスク管理への対応等